- まちづくり・地域活性課題
- Report
2026.10.26
箱根の豊かな自然を沿線にくらすお客さまの"ホームフォレスト"に。
「箱根ランフェス」で目指す、未来の箱根のまちづくり
~小田急電鉄「HAKONATURE (ハコネイチャー)」とJCDの共創~

2017年にスタートした「箱根ランフェス」。富士箱根伊豆国立公園の雄大な自然を舞台に、「ランニング」「アウトドア」「フェス」の3要素が融合したエンターテイメントスポーツフェスティバルです。コロナ禍を経て、4年ぶりの開催となった2024年からは、タイム計測なしの"競わないランニング"というユニークなコンセプトに刷新。自動車専用道路「芦ノ湖スカイライン」を5時間封鎖し、最大標高1,000m以上のトレッキング感覚のコースを、富士山や芦ノ湖、駿河湾などの眺望とともに走破する"絶景ラン"が楽しめます。今ではエントリーがあっという間に定員を超える人気イベントとなり、参加者満足度は91%(2026年当社調べ)と高い評価を得ています。
「箱根ランフェス」は、「地域共創」「持続可能な観光」を目指すJTBコミュニケーションデザイン(JCD)がプロジェクトのハブとなり、箱根の地域の皆さんや企業と共に、実行委員会形式で育てあげてきました。今回は、こうした取り組みに共鳴し、2025年よりパートナー企業として参画する小田急電鉄株式会社まちづくり事業本部エリア事業創造部の鈴木真理子氏が、JCDの川杉とともに2027年の「箱根ランフェス」にかける展望を語ります。
箱根ランフェス https://hakone-runfes.com/
プロフィール
小田急電鉄株式会社まちづくり事業本部エリア事業創造部
鈴木
真理子氏
2011年小田急電鉄株式会社入社。ホテル事業統括部(現・グループ経営部)、日本民営鉄道協会、CSR・広報部(現・広報部)を経て、2023年4月から始動した箱根の新たな楽しみ方を提案するプロジェクト「HAKONATURE」に携わる。以来、毎週のように箱根の山に入って、より豊かな体験ができる自然体験を模索している。お気に入りは、早朝の清々しい芦ノ湖や、箱根の魅力が凝縮された桃源台エリアなど。
本対談は、箱根ランフェス総合プロデューサーである当社社員、川杉との対談形式で行われました。
1 「箱根ランフェス」をプラットフォームに、箱根の新しい楽しみ方を共創
―箱根ランフェスという場を通じてどのように共鳴したのか、地域の持続的な発展を目指す「共創」へと歩みを進めていったのか、当時の想いとともに紐解いていただきたいと思います。
鈴木氏
小田急電鉄では、2023年4月より箱根の新たな楽しみ方を提案する「HAKONATURE(ハコネイチャー)」を始動しました。この背景には、箱根には毎年2,000万人のお客様が訪れている一方で、「国内客離れ」という課題がありました。「箱根=温泉」というイメージに固定されたままでは、いつか日本人に選ばれなくなってしまうのではないか。そこで、国立公園内という箱根の恵まれた自然をフィールドに、「自然体験」をテーマにした箱根の楽しみ方を、地域プレイヤーの皆さま、外部事業者の皆さまとともにつくり、箱根を持続可能なエリアにしていくプロジェクトが誕生しました。箱根湯本駅から徒歩7分の場所に活動拠点となる「HAKONATURE
BASE」を設け、ネイチャーツアーや各種プログラムを行っています。
川杉
箱根ランフェスも、箱根の自然景観の素晴らしさを知ってもらうことを目的としてスタートしました。箱根ランフェスをプラットフォームに、地域で楽しめる新しいコンテンツをつくっていきたいという想いは、HAKONATUREと共通しています。
鈴木氏
はじめて川杉さんたちとお会いしたのも2023年でした。箱根ランフェスに心を動かされたのは、いわゆる一過性のイベントではなく箱根ランフェスを続けていくことで箱根の町の魅力も、もっと高まっていくことが想像できた点でした。町自体が豊かになれば地域の持続性も高まり、結果的に観光客増加にもつながると考えています。
2 「箱根をもっと盛り上げる」を目的に町と企業が連携し、地場の力を強くする
川杉
箱根ランフェスは2017年にスタートしました。きっかけは、2015年に発生した大涌谷の火山活動の活性化により、観光客が激減したことです。2014年から箱根町と包括連携協定を結んでいたJTBグループの一員であるJCDが、箱根の景観や自然を多くの人に知ってもらうための新しい観光スタイルとして、スポーツイベントを提案したことがそもそもの始まりです。
箱根ランフェスは、箱根町の自治体や箱根DMO、旅館組合などの関係団体、地域の皆さんや企業などが業種の垣根を越えて集まり、JCDがハブ役となって実行委員会形式で運営しています。全員が「箱根を盛り上げる」という共通の目的を持ち、取り組みを継続しています。
鈴木氏
箱根の地域の皆さまと密接につながりながら取り組まれていることを知り、同じ箱根に関わるプロジェクトとして箱根ランフェスを、いや、川杉さんを応援したいと思ったことが記憶に残っています(笑)。HAKONATUREは小田急が主語ではなく、地域プレイヤーの皆さまが活躍できるコンテンツをつくる支援型のプロジェクトです。それは箱根ランフェスが単なるスポーツイベントではなく、地域の魅力を披露するショーケースであり、地域・企業・社会をつなぐコミュニティの場であることと似ていますね。
3 ランの後も楽しめるフェスのメイン会場が、地域の魅力を届ける接点に
川杉
小田急電鉄様とは2024年に協議がはじまり、2025年よりHAKONATUREとしてパートナーに参画いただいています。2026年の箱根ランフェスでは、スポーツプログラムのひとつとして箱根の自然などのスポットを巡るナビゲーションスポーツ「ロゲイニング」の開催や、芦ノ湖キャンプ場のメイン会場でHAKONATUREの活動発表やブース出店を実施いただきました。
鈴木氏
メイン会場で盛り上がったのは、登山道の整備のための「丸太かつぎ体験」です。箱根の自然を楽しみながら守るという大切さを伝えたいという思いから、箱根の登山道補修隊である「箱根トレイルメンテナンス」の皆さまと共に活動紹介をしているのですが、登山道に持ち込む丸太の重さはなんと60キロ! その実物を用意し実際に担いでもらう体験が、ビジュアルにも目をひくようで、なぜか女性客に大人気(笑)。行列ができるほどでした。
川杉
箱根ランフェス参加する皆さんは、環境問題を理解し、自分事として考えられる感度の高い方が多いように感じます。走り終わった後のメイン会場では、女性客を中心ににぎわっており、飲食や物販のブースだけではなく、自然や箱根に関する展示もとても人気で、店先に置いたチラシなどはすぐになくなってしまいました。
鈴木氏
イベントの滞在時間が長いというのも箱根ランフェスの特徴です。「走って帰るだけ」ではなく、自然やグルメ、景色など箱根の魅力を実感できる場所として、皆さんに楽しんでいただけているからだと思います。HAKONATUREとして飲食店のブースも出し、小田原・箱根をはじめとしたジビエを提供する事業者や、全国でも珍しい箱根の「中硬水」でつくるクラフトビールを醸造する事業者などを紹介しました。こうした箱根でしかできない取り組みをしている店や事業者の皆さまを多くの方に知っていただく場としても活用させていただきたいですね。
川杉
備品の調達やイベントの運営をしていただいているのも、ほとんどが箱根町の方たちです。地元企業がベネフィットを得られる仕組みをつくっています。
4 観光地の一極集中を緩和する「人流分散」の解決にも
川杉
箱根ランフェスで苦労しているのは、交通アクセスです。メイン会場の芦ノ湖キャンプ場は、主要観光エリアである元箱根の対岸にあり、アクセスが難しいことに加え、国立公園内のため広い駐車場もなく、主要な交通手段はすでに観光客でいっぱいになっている路線バスです。行楽シーズンを迎える4月に、何千人もの移動手段を確保することは大きな課題でした。
鈴木氏
箱根では湯本や強羅、元箱根、大涌谷に観光客が集中しやすく、「人流分散」という課題は、我々が探求していきたい領域のひとつでもあります。
川杉
小田急グループ様をはじめバス会社の協力を得て臨時バスの運行や、パーク・アンド・ライド(専用駐車場を整備し、マイカーからバスへの乗り継ぎを図るシステム)を導入したり、イベントのスタート時間をずらすなど、人流をどう分散していくかについてデータをとりながら、なるべくストレスのかからない方法を構築していきました。皆さまの協力もあり、2026年の開催では約4,500人もの参加者を無事に輸送することができました。
鈴木氏
交通渋滞も箱根の町の課題のひとつで、たくさんの人数が集まるイベントでも公共交通機関で移動が可能になるのは、当社グループとしても地域への影響を考えてもありがたいことです。
川杉
公共交通機関の利用は、車の排気ガスを抑えるなど、環境保全にもつながります。約4,500人というある程度の規模を集客できる方法やデータが得られたので、人流分散の解決にもつながるとよいですね。
5 2027年の「箱根ランフェス」の展望
川杉
2027年からは、小田急電鉄が提供するデジタルチケットサービス「EMot(エモット)」を通じて「箱根ランフェス」のエントリー受付などを行います。これまではランニングイベント専門サイトで募集を行っていましたが、より気軽に箱根の自然とランニングを楽しんでほしい、さらに小田急沿線の方々にも知っていただき、箱根のリピーターになってほしいという狙いがあります。
鈴木氏
「EMot(エモット)」では、「特急ロマンスカーの電子特急券」の販売のほか、美術館や温泉、アクティビティ施設が利用できるチケットも取り扱っています。いずれは箱根ランフェスのチケットに温泉や飲食をかけあわせて訴求することもできます。"温泉だけではない、ランニングを楽しむための箱根"という新たな魅力を深堀していく手段にもなります。交通広告も含め、「EMot」を通して箱根ランフェスを約520万人の沿線のお客さまにも広めていきたいですね。
川杉
話は変わりますが、「HAKONATURE」のスローガンに、「人生に、ホームフォレストを」があります。ホームフォレスト=「いつでも帰りたくなる場所」ということですね。最初に聞いた時にすごくいいなと思いました。都心に向かう上り線は通勤や通学で使う「オン」のツールで、箱根に向かう下り線は自分を解放する「オフ」のツールになる。下り電車に乗ればHAKONATURE等の取り組みで楽しい時間が待っているというのがいいですね。その楽しさを生み出すコンテンツづくりに「箱根ランフェス」がお役にたてればと思います。なによりも、「箱根の自然や魅力を伝えていきたい」という同じ目的を持って活動できることに大きな価値があります。
鈴木氏
自然に還るホームフォレストを持つことで人生がもっと豊かになる。さらには箱根をホームフォレストと感じてくれる人がふえるほど、箱根の自然環境もよくなるとも思っています。箱根ランフェスは、一過性のイベントではなく箱根を持続的な地域にしていくことを大事にしながら、地域や外部のプレイヤーの皆さまを応援していく取り組みです。個人的な意見ですが、箱根に関わる人はみんな応援したらいいと思います(笑)。HAKONATUREもその一員として役割を果たしていきたいです。
川杉
様々な企業とつながり、毎年新しいコンテンツが生まれ、事業としてしっかり地域に貢献できる。これこそサステナブルですね。2027年の「箱根ランフェス」でも箱根を楽しく盛り上げていきましょう。
箱根ランフェス2027では、協賛パートナーを募集しています。
私たちが目指すのは、単なる協賛の枠を超え、地域と企業が力を持ち寄り、箱根の魅力と新しい地域スポーツの形をともにつくり、育てていく共創です。
そんな未来をともに実現する、文字通りの「パートナー」になりませんか。







