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2025.11.26
「楽しさを競おう。」が地域を育む、持続可能な観光と共創の未来。
~箱根ランフェス ジャパン・ツーリズム・アワード受賞の軌跡~

2017年にスタートした「箱根ランフェス」。"競わないランニング"というユニークなコンセプトで、スポーツ・アウトドア・観光を融合させたこのイベントが、この度、日本旅行業協会(JATA)主催第9回「ジャパン・ツーリズム・アワード」を受賞しました。自然環境に配慮しながら地域とともに育まれるイベントとして毎年着実にファンを増やし、進化を続けるその背景には、「地域共創」や「持続可能な観光」をデザインするJTBコミュニケーションデザイン(以下、JCD)の思想が息づいています。 受賞の舞台裏、そして2026年に向けた展望を、箱根ランフェス実行委員会のメンバーに聞きました。
- "競わないランニング" がもたらした新しい価値
- 持続可能なイベントの秘訣は、環境配慮と地域とのつながり
- 進化する箱根ランフェス:2026年、そしてその先へ
- 地域と走る、企業と走る。共創が生み出す新たな価値
- スポーツを通じて、地域の未来をデザインする
1 "競わないランニング" がもたらした新しい価値
―箱根ランフェスについて、その特徴と、ジャパン・ツーリズム・アワード受賞の背景について教えてください。
堺
箱根ランフェスは、箱根の雄大な自然を舞台に、「ランニング・アウトドア・フェス」の3要素を融合させたエンターテインメント型スポーツフェスティバルです。
一般的なマラソン大会のようにタイムを競うのではなく、芦ノ湖スカイラインという普段は走ることのできない特別なコースを、「楽しさを競おう。」をコンセプトに開催しています。
菅野
「ジャパン・ツーリズム・アワード」は、地域の活性化や持続可能な観光づくりに貢献した取り組みを表彰するものです。今回の受賞は、単なるスポーツイベントにとどまらず、"競わないランニング"という新しい発想で、フェスとして昇華させた点を評価いただきました。
また、地域の皆さんや企業と共に実行委員会形式で運営している点、2017年から継続して開催している点も高く評価されたのではないかと思います。
堺
また、箱根町の自治体や箱根DMO、旅館組合、教育委員会など、地域のステークホルダーの皆さまとJCDがプロジェクトのハブとなり、共創しながら実行委員会形式でチームを作り上げてきたことや、一過性のイベントではなく、2017年から持続的な形で続けてきたことも評価された点なのかなと思っています。
まだ道半ばで、課題もありますが、「ジャパン・ツーリズム・アワード」の受賞は、社会的な評価の証でもあり大変嬉しく思っております。
2 持続可能なイベントの秘訣は、環境配慮と地域とのつながり
―どのようにして「持続可能なイベント」としての地位を確立してきたのでしょうか?
川杉
箱根というと「温泉地」という印象が強いですが、実は「富士箱根伊豆国立公園」として豊かな自然が広がっています。この箱根の自然景観の素晴らしさを知ってもらうことを目的としてスタートしたのが箱根ランフェスでした。
国立公園内での開催であるため、当初から環境への配慮を徹底しています。施工物を極力作らず、廃棄物を減らすことを心がけ、2024年からは紙コップを廃止するなど様々な取り組みを実施しています。
2024年はコロナ禍を経て再始動した年でもあり、規模を一度小さくし、「タイム計測なし・制限時間5時間で景色を楽しむ」という新しい形式に舵を切りました。
結果的に、「マイペースで走れて楽しかった」「家族や友人と景色を楽しめた」といった声が多く寄せられ、箱根ランフェスの価値がより明確になったと感じています。

菅野
箱根町をはじめ約25団体・企業で構成される実行委員会は、約200名規模に及びます。箱根町の役場職員の方々はもちろん、観光協会、教育委員会、消防署、病院関係者、そしてJCD社員もサポートスタッフとして参加しています。毎年同じメンバーが「また来年も手伝いたい」と言ってくださることが、何よりの喜びですね。多くの関係者が関わるため調整面では大変なこともありますが、地域とともにイベントを育てていく手応えを強く感じています。
(箱根ランフェス実行委員会会議の様子)
堺
アクセス面でも、バス会社の協力を得て「パーク・アンド・ライド」を導入するなど、環境負荷を抑えた交通手段を工夫しています。2025年はスムーズに運営でき、地域からの理解もさらに広がったと感じています。
3 進化する箱根ランフェス:2026年、そしてその先へ
―2026年大会では、どのような新しい取り組みを予定していますか。
菅野
2026年は「より自由に、誰でも絶景が楽しめるランイベント!」をテーマに掲げています。
これまでの「走る楽しさ」に加え、「箱根という土地そのものを味わう体験」に広げていきたいと思っています。会場では地元グルメを提供し、走り終えた後は温泉に浸かる、宿泊して自然を満喫する----そんな一連の"箱根時間"をデザインしています。
ランフェスをきっかけに、参加者が箱根を好きになり、再び訪れてもらえるような循環を生み出したいです。

堺
2026年大会では2日間構成とし、「ファンのエンゲージメントをより深める」ために、初日と2日目でプログラムを分けています。1日目は従来のマラソンイベントを行い、2日目は「新しいことに挑戦する日」として設定しました。箱根エリアの活性化を目指すパートナー企業様と共に、ノルディックウォーキングやロゲイニング企画など、箱根のさらなる魅力を体験できるプログラムを企画中です。スポーツを軸に、ランナー同士や地域との新たなつながりを生み出せる場を提供していきます。
川杉
環境面、いわゆるサステナブルな観点でも、さらに踏み込んだ取り組みを進めています。以前から給水所の紙コップを廃止し、ランナーへ折りたたみカップの配布を実践していましたが、給水用の水を運ぶ際に大量のペットボトルを利用していました。この課題を解決するため、パートナー企業様が他のマラソン大会で実施している「ウォータージャグ」という20ℓの給水器を試験的に導入予定です。将来的には完全移行を目指したいと思っています。 また、参加者も4,000人規模になるため、アクセスや混雑対応も重要です。シャトルバスの増便や、スタート時間の分散など、快適で持続可能な運営体制を整えていきます。

菅野
箱根町陸上競技協会の方に実行委員として加わっていただき、箱根駅伝などでも実践されている知見を共有いただくことで、安全性の高い大会運営を目指しています。 地元の宿泊施設やJTBでは、箱根ランフェス専用の宿泊プランも検討されており、イベントに参加するだけでなく、「泊まって、食べて、遊ぶ----"滞在型の体験価値"を創る」方向へと進化が期待されています。
4 地域と走る、企業と走る。共創が生み出す新たな価値
―箱根ランフェスは、地域や企業との共創が大きな特徴ですね。
堺
あるパートナー企業はアウトドア拠点を作り、箱根に持続的に人が来るような仕組みづくりに取り組まれました。その理念に共感したアウトドア系の企業がパートナーに加わり、アウトドアカルチャーと地域の魅力を結びつけています。箱根ランフェスは、こうした企業と地域の想いを"走る"という体験で一つにする場になっていると感じます。
菅野
2025年開催時は、インターネット関連企業様が箱根ランフェスのコンセプトにご賛同いただき、ECサイト内で公式グッズを販売しました。Tシャツやタオル、トートバッグなど、参加者の皆さんからご好評いただきました。また、地元企業とのつながりも年々深まっています。箱根の老舗の寄木細工専門店様や、大涌谷名物の黒たまごの事業者様などが協賛くださり、地域一体でランナーを応援する空気ができています。
川杉
私たちは、持続的なCSV(Creating Shared Value)事業への発展を目指し、新たなパートナー企業を随時募っています。過去には、ベッドメーカー様が自社製品を活用した休憩スペースを提供したり、飲料メーカー様がランナーにドリンクを提供してSNSで発信したりと、各社が創意工夫を凝らしています。このようなスポンサーシップ・アクティベーションやタッチアンドトライを行うことは、一般的なマラソン大会では難しいでしょう。"企業と参加者の接点づくり"が実現できるのは、箱根ランフェスの自由度の高さゆえだと感じています。企業が地域とつながり、地域が企業の熱意を受け止める。この双方向の関係が、箱根ランフェスをより豊かなものにしていると感じています。

第9回「ジャパン・ツーリズム・アワード」受賞にあたり、喜びと期待のメッセージが寄せられました。
【箱根町 町長 勝俣浩行 様】
箱根の美しい自然環境の中で、
自由で競わない新しいスタイルのスポーツイベントとして開催されている「箱根ランフェス」が、213件もの応募の中から入賞を果たしたことを心よりうれしく思います。開催に向けてご尽力いただいている実行委員会の皆様、そしてさまざまな場面でご支援くださっている協力団体の皆様には、心から感謝しております。
「持続可能な観光への貢献」は、箱根町の観光業における重要な目標でもあります。そうした観点からも、持続可能なスポーツツーリズムである箱根ランフェスは非常に意義深い取り組みであり、今後も箱根を代表するスポーツイベントとして継続的に開催されることを願っております。
【株式会社湘南よみうり新聞社 編集長 須藤希久 様 (実行委員会事務局長)】
このたび、数多くの素晴らしい取り組みの中から箱根ランフェスを選んでいただき、大変光栄に思います。箱根の大自然の中で、タイムを競わず自由に楽しめる箱根ランフェスを、より多くの方に知っていただくきっかけになれば幸いです。大会を支えてくださっているすべての皆さまに、この喜びをお伝えしたいと思います。ありがとうございます。箱根ランフェスは、毎回新しい工夫を重ねながら進化しています。箱根の魅力を最大限に引き出し、スポーツを通じて新たな価値を生み出せるよう、参加者や地元の皆さん、協賛企業、運営スタッフが一体となって「楽しさを競おう。」を体現し、今後も発展させていきたいと考えています。
【箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会) 真野 剛 様】
このたびのご受賞、誠におめでとうございます。コロナ禍を乗り越え、地道な活動を重ねてこられた努力と、開催に向けた熱い思いが実を結び、この栄誉につながったことを大変うれしく思います。まさに蒔かれた種が花開いた瞬間だと感じております。
タイムを競う大会から、ランそのものを楽しむ「FunRun」へと転換し、新たな参加層を広げられた点に心より敬意を表します。この挑戦が功を奏し、「春の箱根」を代表するイベントとして定着してきたことをうれしく感じております。今後も箱根から"走る楽しさ"を発信し続けていただければ大きな喜びです。
5 スポーツを通じて、地域の未来をデザインする
―箱根ランフェスの今後の展望を教えてください。
堺
箱根ランフェスはJCDにとっても「地域共創の実践の場」です。
行政・企業・地域住民が一体となってプロジェクトを進める過程には、毎回新しい学びがあります。イベントを"つくる"だけでなく、"ともに育てていく"という視点を大切にしながら、持続可能な地域づくりに貢献していきたいと思います。
菅野
「走ることが目的ではなく、走ることで地域の価値に出会う」それが箱根ランフェスの原点です。この場所を愛する人が増え、地域の方々が誇りを持てるようなイベントにしたいです。
川杉
箱根ランフェスは、スポーツを通じて箱根の自然や環境、そして地域の魅力を伝える取り組みです。 温泉地という一面だけでなく、「自然の中で遊び、心を解き放てるフィールド」としての箱根のポテンシャルを感じていただきたい。その体験を通して、箱根を"好きになる"きっかけをつくれたらと思っています。また、私たちと同じ志を持ち、新しいアクションをともに生み出してくださる協賛企業・パートナー企業とのつながりも年々広がっています。
企業の皆さんと共に地域の魅力を発信し、継続的に新しい価値を生み出していく、その積み重ねこそが、箱根ランフェスの大きな強みです。
将来的には、イベントの収益を環境保全活動や林道整備、通年で楽しめるコンテンツづくりに活用し、箱根に還元しながら、地域の未来をともに育てていく仕組みを築いていきたいと考えています。当社にパートナーシップだけでなく「箱根ランフェスの仕組みを取り入れたい」というお問い合わせも増えています。こうした共創モデルを全国へ広げ、スポーツイベントを通して、社会貢献とブランド価値の向上を両立させる新しい地域づくりの形を、これからも追求していきます。

JTBコミュニケーションデザイン(JCD)は、「人」と「企業」と「地域」をつなぐ「最適なコミュニケーション」をお客様や事業パートナーと共創し、持続的でよりよい社会の実現に貢献することをサステナビリティビジョンとして掲げています。 箱根ランフェスは、その象徴として、スポーツを通じた「地域共創」と「持続可能な観光」の新しいモデルを示しています。 「楽しさを競おう。」がつなぐのは、人と人、そして地域の未来です。 JCDは今後も、地域の声に耳を傾け、共に走り、共に創るパートナーであり続けます。












