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「リーダーシップ基礎力開発と交渉学」セミナーレポート<後編>

交渉は駆け引きではなく問題解決。
相手の視点に立つことで生まれる信頼が交渉のカギ。

2018年12月14日にJTBコミュニケーションデザインで実施された「リーダーシップ基礎力開発と交渉学」セミナー。アカデミックな視点とビジネス・経営の現場で交渉学の必要性を説くお二人の講演後は、交渉学・対話学を通したリーダーシップ養成についての有用性やその魅力・可能性について対談を行いました。レポート後編では、トークセッションの模様をお伝えいたします。

<登壇者プロフィール>
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田村次朗

田村 次朗氏
慶應義塾大学法学部教授
ハーバード大学国際交渉学プログラム・インターナショナル・アカデミック・アドバイザー

ハーバード大学ロー・スクール修士課程、慶應義塾大学大学院法学研究科民事法学専攻博士課程。専門は経済法、国際経済法、および交渉学。日本における交渉学の第一人者。各省庁などの委員を務めるとともに、日米通商交渉、WTO(世界貿易機関)交渉等に携わる。ハーバード大学の国際交渉プログラムのインターナショナル・アカデミック・アドバイザー、ダボス会議 (世界経済フォーラム)の「交渉と紛争解決」委員会の委員を務める等、最前線における国際交渉の活躍経験もある。またその一方で、実務教育としての「交渉学」の開発に取り組んでいる。

須原清貴

須原 清貴氏
公益社団法人 日本サッカー協会専務理事

住友商事、ボストンコンサルティンググループ(BCG)で実務経験を積んだ後、プロフェッショナル経営者としてのキャリアを歩む。GABA、キンコーズ・ジャパン、ベネッセ国内英語カンパニー、ベルリッツ・ジャパン、ドミノ・ピザ ジャパン等において、社長もしくはそれに準じるポジションで企業価値向上に貢献したのち、2018年3月から現職。慶應義塾大学法学部法律学科卒。ハーバードビジネススクール(MBA)卒。
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ミッションを共有する重要性

田村次朗氏(以下、田村)
須原さんの講演を聴いて、私も学生時代を思い出しました。私と須原さんの関係は、実は私が大学院生の時に、共通の教授のもとで学んだ院生と学生という間柄でした。須原さんが留学していた時に私が教員になり、須原さんが日本に戻られて私のゼミに入り、その頃から、一緒に、交渉学について考えながらやってきたというわけです。須原さんは大学を卒業して商社に入社後、再びハーバード大学で学問としての交渉学を学びました。学んできた交渉学が実務面でどのような影響を与えたか、もう少し詳しく教えてください。

須原清貴氏(以下、須原)
私はビジネスパーソンとして、いろいろな立場で交渉をする経験をしてきました。商社に勤めていた時はもちろんですが、様々な会社で経営者として関わってきた経験を通しても、直面する課題や問題のタイプは様々でした。特に印象的だったのは、英会話学校の経営者として、複雑で一筋縄ではいかない上場のプロセスを経験したことです。なにしろ上場は様々な利害が交錯する世界ですからね。誰がイニシアチブをとっていくのか、誰が交渉をまとめ上げていくのかを常に考える必要があります。やはり上場においては、当事者である自分たちがイニシアチブをとっていかなければならないのですが、監査法人や弁護士事務所など、ひとつひとつの専門領域においては、知識や実務面で自分たちは絶対に勝てないのです。そこで交渉をうまく進めていくためには、勝ち負けという価値基準ではない新たな指標を示す必要があるのです。"そもそも、なぜ上場するのか"。私たちは上場するプリンシパルとして、こうしたメッセージを出し続ける必要があるのです。この時の経験が、私が交渉学を学んで得た気づきを示す良い例でしょう。

田村
リーダーシップスキルのコアになるネゴシエーション(交渉学)の一番の要は、「ミッション」なのです。つまり、"なんのために、やっているのか"。何が最終的な目的なのかを、関わる人たちに示すことが大切なのです。目の前の目標を達成するために、駆け引きだけでやろうとしている人には、今のお話でもあったように、本来の目的に気がつかないのです。交渉をするお互いが、どこを目指しているのか、最終目的や目標を理解しておくことは、とても重要なポイントになってきます。

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須原さんが現在専務理事をなさっている日本サッカー協会においては、その「ミッション」がどのようにプラスの効果として、影響を与えたのでしょうか。

須原
日本サッカー協会はプロ・アマチュア、そして地域の登録チームなど、国内のサッカー団体を統括する立場です。実はサッカー界には、明確な上下関係というものはありません。プロ組織であるJリーグは勝つことが目的になりますが、日本サッカー協会には、明確なKPI(重要業績評価指標)はないのです。だからこそビジョンやミッション、メッセージが非常に重要になってきます。協会を構成する団体には実に様々です。私たちは、勝ち負けや強さだけを基準に各所属団体の優劣をつけることはありません。なぜなら私たちJFAは、勝ち負けという価値基準ではない、明確なビジョンを持って組織を運営しているからです。

田村
須原さんが語られたところをアカデミックな視点で見れば、とても興味深い点があります。これは、みなさんの組織に置き換えてもわかりやすいと思います。例えば営業職に求められるのは、数字という結果を出すこと。法務部門ではコンプライアンスを重要視することでしょうか。同じ会社に所属していても、部署やスタンスが違えば意見が相違することは、皆さんも日々よく経験されていることでしょう。この時、なにが大事なのかを考えてみてください。

それは、会社の持っているビジョンやミッションを、皆が共有しておくことなのです。何か困難に直面したときには、常にビジョンに照らし合わせ、話し合って行動することが大切になってきます。皆が同じ方向を向いていれば、それぞれの立場において価値があると認め合うことができ、個々の役割を果たすことで、目的を達成することができる。つまりビジョンやミッションを共有することの大切さが、須原さんがお話しになられた日本サッカー協会の例でもよくわかりました。

相手の視点に立つことで生まれる信頼が、交渉のカギ

田村
危機があった場合やネガティブな事態には、どのように対処されているのでしょう。先ほどの講演でスポンサーとの関係についてお話しになられましたが、"相手の視点"ということについて、もう少し教えてください。

須原
JFAとスポンサーを取り巻く多くの事例のなかから、テレビの視聴率を例にあげてみます。スポンサーの立場では、スポンサー料を減らして、露出をキープしたいというのが本音にあると思います。一方、私たちは全く逆のことを考えている。その時、相手側(スポンサー)の立場に立って考えてみるのです。スポンサーが直面している戦略課題は何か。ここでJFAとスポンサーの関係だけにとらわれず、相手のことをとことん考えて、課題に対する仮説を立て、こちらの想いを提案してみたのです。3割くらいしか的を射ていなかったかもしれませんが(笑)。それでもスポンサーからは、こうした提案をしてくれた人は今までいなかったと言われました。この流れがあって初めて、スポンサーからの信頼が生まれたのだと感じています。

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田村
今のお話は「三方よし」の一部、つまり「相手よし」に当たりますね。学問的に見ても、とても面白みを感じるお話でした。相手のことを思って考えてみても、全てにおいて当たっているとは限らない。私たちが今まで交渉をどうやってきたか振り返ってみてください。自分たちだけで相手のことを決めてかかり、話をしていたのではありませんか。

私が学生や社会人を相手に研修する時、別の内容が書いてある紙を持ってもらい、お互いが交渉をするといったことをやってもらいます。最後にそれぞれが持っている紙を交換するのですが、その時なにが起きるのか。相手の紙に書かれていることを互いが読んで、「そういうことだったのか!」と初めて気づくのです。ここにはふたつの学びがあります。「なぜ聞き出せなかったのか」「なんで言ってくれなかったのか」と、参加したほとんどの人が同じ感想を述べます。ネゴシエーション(交渉学)の授業というのは、実にシンプルにこうした学びの機会があるのです。相手の思考を知って、交渉するためにはどうすれば良いのか。その答えは、つまるところ"傾聴すること"なのです。そしてそれを踏まえて、相手に質問することです。

須原さんは、こうした一連のプロセスをご自身のビジネスのなかでやってこられた。ハーバード大学に留学後、相手の視点に立つということを学び、実践されてきたようです。

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田村
「応報原理」という言葉があります。交渉の現場では、相手に質問しづらい雰囲気が常に付きまといます。余計なことを言って、変な刺激を与えたくない。のらりくらりと話を進めていきたい。そのように思っていませんか。でも質問する原理は、やり方次第で簡単なのです。自分が言えることを相手にどんどん言ってあげる。つまり情報提供する。すると相手は応報原理で、「そちらが話してくれるのなら、私も話します」というようになるのです。

でもこれがなかなかできていない。だから質問するのもビクビクし、質問をしたとしても相手を怒らせることになりかねず、結果ギスギスとした関係になることを心配してしまう。だから、まずは自分から情報提供して、相手の情報をもらう。こうした取り組みを須原さんは実践されているので、とても感心しました。

交渉は駆け引きではなく、問題解決である

田村
駆け引きから一段ステップアップするには、なにをすれば良いのか。先ほどの須原さんの講演で「パイ全体を拡大する」とおっしゃっていましたが、この点についてもう少し詳しくお聞かせください。

須原
クライアント対応で問題が発生した時、すぐ謝罪するのは当然のことですが、それだけで終わってはいけません。関係性を一歩進めるためには、その段階で目の前にある問題に対して、仮説ベースで検証した内容を持った上でクライアントに話をするのです。今回の失敗点から得た学びを、次に活かすためにはどうすれば良いのか。その時、自分たちの考えを伝えるだけでなく、クライアントからもアドバイスや知恵を借りるように仕向けるのです。

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「クライアントの頭脳を借りる」。これは私がコンサルタント会社に在籍していた時代に学んだことです。自分たちがファクトとロジックを駆使して立てた仮説を、クライアントを巻き込んで検証してもらう。こうした姿勢はクライアントだけでなく、私たちスタッフにも影響を与えてくれる。つまり関係している全ての人が関わることで、問題解決にむけて良いスパイラルとサイクルに導いてくれるのです。

田村
三方よしを深掘りした考えですね。"相手よし"というのは、相手にとって良いことをただ単にしてあげるということではありません。相手の気持ちを満足させることが重要なのです。お互いの交渉者が通常の駆け引きだけにとどまっている時点では、信頼関係は築けません。でも、須原さんのクライアントへのアプローチの仕方を見ているとわかりますが、相手に「教えてください」といって懐に飛び込んでいく。これが交渉学で大切な、信頼につながる一歩となるわけです。

つまり、ここで言う問題解決で重要なのは、相手に自分の考えを押し付けるのではなく、相手から学びたいという姿勢を示すことに尽きるのです。"向こうから→こちらへ"というベクトルの関係性を、お互いが作れれば作れるほど、交渉はうまくいきます。「教えてください」「助けてください」という一言は、実は重要な言葉なのです。こうした一言で相手は心を開いてくれますから。須原さんのお話はさすがに豊富な実務経験がベースにあり、理解しやすいですね。

田村
交渉学の教育では、常に現実との戦いがあります。WIN-WIN交渉をロジックで教えたとしても、現実の世界では相手があり、交渉の現場では駆け引きを仕掛けてきます。その時、私たちはファシリテーションといって、相手を良い方向へと導かなければなりません。世の中が駆け引きの世界だから、交渉学を勉強しても仕方がないと諦めてはいけません。そこから一歩進むべきなのです。

リーダーシップ教育を夢で終わらせないために

須原
リーダーは、「言い続けること、持ち続けること、そして信じ続けること」がなによりも大切です。なかでも言い続けることによって、こちらの気持ちが相手に伝わります。そして言い続けることは、自分に対してのメッセージにもなるのです。それが自らの行動をコントロールすることにつながっていくのです。

田村
人が夢を持つことは当然です。それを実現させるための方法を、本来は教育しなければならないと私は常に思っています。だから、リーダーシップ力を身に付けたいという夢がある人に、ただ頑張れというのはとても無責任なことです。夢に近づく方法のなかに、私はリーダーシップを得るためのスキルがあると思うのです。

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私たちはリーダーとリーダーシップという言葉が人々に与える認識の違いを意識しながら、日々生活をしていかなければいけません。リーダーとは、はっきり言ってしまえば迷惑な存在なのです。けれども、リーダーがリーダーシップを発揮したとすれば、それはものすごくありがたい存在になります。その"シップ"を発揮するためには、やはりリーダーシップのための基礎力を身につける必要があるのです。リーダーシップ力で一番必要な能力は、他者の言葉を傾聴することになります。もし皆さんについていきたいと思えるリーダーがいるとすれば、それはおそらく他者の意見を聞き、理解し、そして活用してくれる人物ではないでしょうか。ある意味コンダクター型のリーダーとも言えます。本当の意味でリーダーシップのスキルを身につけることの大切さ、そしてそのための交渉学を学ぶ重要性をおわかりいただけたと思います。

田村
須原さんが日々経営現場で交渉学を活用しているお話を伺いまして、私が取り組んできたリーダーシップ基礎力開発と交渉学の教えが、間違っていないと確信を得ました。 今日はありがとうございました。

須原
ありがとうございました。

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