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働くシニアのモチベーションと上司からの評価に関する調査

―「定年の崖」がモチベーションを揺るがす、再雇用の報酬減額幅がモチベーションと関連、上司が期待するのは「次世代への継承」、現実とのギャップが明らかに ―

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【調査結果のポイント】

■働くシニア(55歳以上・フルタイム勤務の社員)のモチベーションの現状
1. シニアのモチベーション、「定年まであと2年」で落ち込み
2. 再雇用のシニア、報酬減額が大きいほどモチベーションは低下
3. シニアのモチベーションに最も大きな相関を持つのは職場に居場所があること、部門の人間関係がよいこと
4. 上司の相談のしやすさが、シニアのモチベーションと大きな相関を持つ
  知識や能力を活かせること、感謝されることもシニア社員のモチベーションと相関
5. 高いモチベーションのシニアは「役に立っている」ことが支え、
  低いモチベーションのシニアは「報酬」が支え、
  自由記述にはモチベーションの支えとして「感謝されたとき」の記載が最多
6. シニアのモチベーションを低下させるのは単純作業/評価への不満/人間関係
  モチベーションが中~低い層は処遇への不満や疎外感などが低下の要因に
7. シニアの後悔、1位は「専門的な知識・能力を身につければよかった」28.7%、
  2位は「社外の人間関係を作ればよかった」23.2%(3つまでの複数選択による回答)
8. モチベーションが高いシニアは新しい知識を身につけ、孤立感が低く、身体・精神面で健康み
9. 役職の高いシニアほどモチベーションが高い
10. 職場で果たしている役割は「メンバーの一員」が突出、シニア本人の認識と上司の期待にギャップ
■上司から見たシニアのモチベーション
11. 上司から見たシニア、モチベーションが高い人は42.8%、課題は「成果」「柔軟性」
12. 上司から見たシニアの待遇、報酬は仕事ぶりに見合っている61.5%、低すぎる18.3%、高すぎる20.2%
  従業員数20人以上100人未満の企業では、上司の27.1%がシニアの報酬は低すぎると回答
13. 上司からの評価、「働き続けてほしい」78.8%、一方で「異動・退職したほうが良い」21.2%
  「働き続けてほしい」のは「責任を果たし」、「良い人間関係」を作っているシニア
14. 上司からシニアへの期待は「次世代への継承」、現実と期待にギャップ
15. 上司のシニア対応、成功したと感じるのは①後輩への技能継承、②敬意を示す、③経験を活かす采配、
  ④環境・処遇改善

【まとめと提言】

1. 「定年の崖」へのケアと報酬や待遇の適正化
2. 職場環境の整備と内発的モチベーション支援の両輪で相乗効果を
3. 専門性を身につけ、社外の人間関係を作る
4. 「次世代への継承」、現状に即した対策を
5. 上司の成功事例を共有し、学び合う
6. シニア以外の社員への影響を考慮する

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令和7年版『高齢社会白書』によれば、日本の65歳以上人口は3,624万人(総人口の29.3%)に上ります。 2024年の労働力人口において、55歳から64歳までが18.6%、65歳以上が13.6%。55歳以上が32.2%と、職場の約3人に1人に当たります(総務省「労働力調査」より算出)。65歳までの雇用機会の提供が義務付けられる中、組織運営や生産性向上においてシニア層の役割と活躍は今後さらに重要となります。
株式会社JTBコミュニケーションデザイン(以下、JCD)ワーク・モチベーション研究所は、一般的な「60歳以上」というシニア層のイメージにとどまらず、実際には役職定年や処遇変更、キャリアの転機が55歳頃から始まる企業も増えていることを踏まえ、本調査では「55歳以上」をシニアと定義しました。 シニア層本人およびシニア社員を部下に持つ管理職層を対象に、「働くシニアのモチベーションと上司からの評価に関する調査」を実施し、定年前後でのモチベーションや役割の変化、管理職との意識のギャップを明らかにしました。

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【調査概要】

◆調査方法:インターネットリサーチ
◆調査地域:全国
◆調査対象者:本調査644人(事前調査5,000人から抽出)
【シニア本人】事前調査で、55歳以上かつフルタイム勤務をしていると回答した436人
・モチベーションの高さによる意識の違いを見るため高・中・低のグループがそれぞれ同程度の割合に設定
・年代(5歳刻み)および所属する企業の従業員規模(20~100人未満/100人~1,000人未満/1,000人以上)が
 それぞれ同数になるよう設定
【管理職】担当部門の中に55歳以上の社員がいると回答した管理職208人
・所属する企業の従業員規模(20~100人未満/100人~1,000人未満/1,000人以上)がそれぞれ同数になる
 ように設定
◆有効回答者数:本調査644サンプル(男性:566サンプル、女性:78サンプル)
◆実施期間:2026年1月22日~1月26日

<主な調査結果>

本調査は、シニア本人を対象とした調査とシニアを部下に持つ管理職を対象とした調査の2つで構成されます。それぞれの結果を「働くシニアのモチベーションの現状」および「上司からみたシニアのモチベーション」として提示します。


■働くシニアのモチベーションの現状

1. シニアのモチベーション、「定年まであと2年」で落ち込み

仕事へのモチベーションを定年までの年数で比較すると、「定年まであと2年以下」の層は、他の年代層と比べてモチベーションが高い人の割合が低い傾向にありました。一方で、「再雇用・勤務延長となり2年以下」の層では、モチベーションが高い人が42.3%と4割を超えており、定年を境にモチベーションに変化が見られます(図1)。
※モチベーションについては、「今の仕事にやりがいを感じますか」という質問への回答に基づき、高・中・低のグループがそれぞれ同数になるように設定しています。そのため、以下のグラフの「全体」は高・中・低が均等の割合になっています。

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2. 再雇用のシニア、報酬減額が大きいほどモチベーションは低下

再雇用後のシニアでは、報酬が減額されるほど、モチベーションは低下する傾向にあります。特に、報酬の減額が1〜2割程度に抑えられている層では、モチベーションが高い人の割合が半数を超えており、全体と比較しても高い値となっています(図2)。このことから、報酬の減額幅が再雇用後のシニアのモチベーションにかかわっている可能性が示唆されます。
※モチベーションについては、「今の仕事にやりがいを感じますか」という質問への回答に基づき、高・中・低のグループがそれぞれ同数になるように設定しています。そのため、以下のグラフの「全体」は高・中・低が均等の割合になっています。

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3. シニアのモチベーションに大きな相関を持つのは、職場に居場所があること、部門の人間関係がよいこと

「自分の居場所がある」層ではモチベーションの高い方が57.1%に及び、「自分の居場所がない」層の8.5%に比べ高い割合を示しています(図3-1)。 また、「今所属する部門は、人間関係がよい」層も55.6%と半数以上が「モチベーションが高い」と回答しています(図3-2)。
※モチベーションについては、「今の仕事にやりがいを感じますか」という質問への回答に基づき、高・中・低のグループがそれぞれ同数になるように設定しています。そのため、以下のグラフの「全体」は高・中・低が均等の割合になっています。

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4. 上司の相談のしやすさが、シニアのモチベーションと大きな相関を持つ
 知識や能力を活かせることや感謝されることもシニアのモチベーションと相関がある

「直属の上司は、相談がしやすい」層のモチベーションは55.0%と高く、上司との良好な関係が重要になると考えられます(図4-1)。また、「今の仕事に、私の知識や能力、経験が活かせている」または「仕事をする中で、相手から感謝されたり喜ばれたりすることがある」と回答した層のモチベーションは、あてはまらない層に比べて高く、自身のスキルが活かせることや、周囲からの感謝がモチベーションに関係する可能性が示されています(図4-2)。
※モチベーションについては、「今の仕事にやりがいを感じますか」という質問への回答に基づき、高・中・低のグループがそれぞれ同数になるように設定しています。そのため、以下のグラフの「全体」は高・中・低が均等の割合になっています。

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5. 高いモチベーションのシニアは「役に立っている」ことが支え、
 低いモチベーションのシニアは「報酬」が支え、
 自由記述にはモチベーションの支えとして「感謝されたとき」の記載が最多

選択式回答により、仕事へのモチベーションを支えていることを3つまで選択してもらったところ、モチベーションの高さによって明確な違いが見られました(図5-1)。 モチベーションが高い層では、「自分が役に立っていると感じられる」が43.2%と最も高く、次いで「感謝されること」が上位となりました。また、「会社や組織に恩返しをする」という組織とのつながりに関する項目でも、他層よりも割合が高い結果となりました。一方、モチベーションが低い層では、「報酬がもらえる」「ほかにしたいことがない」といった外発的・消極的な理由が上位を占めました。
「仕事へのモチベーション(意欲)を支えていること」について自由記述で回答を求め、集計した結果、「相手から感謝される/相手に喜んでもらえたとき」が最も大きな割合を占めました(図5-2)。特に、モチベーションが高い層でこの回答の割合が高くなっています。 モチベーションが低い層では、「給料・ボーナス/給料日」が他層と比べて高い一方で、「特になし」が45.8%と突出して高い結果となりました。この結果は、モチベーションが低い層の半数近くが、仕事へのモチベーションを支えるものを見いだせていない現状を示しています。

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6. シニアのモチベーションを低下させるのは単純作業/評価への不満/人間関係
モチベーションが中~低い層は処遇への不満や疎外感などが低下の要因に

全体としては、「仕事内容・負荷」や「評価・処遇・給与への不満」に関する内容が多く挙がりました。 その中で、モチベーションが高い層では、 「単純作業をやらされるとき」「不必要なことだと感じたとき」など、仕事内容の物足りなさを中心とした回答が目立ちました。また、自身の貢献に対する評価への不満も挙がっています。 モチベーションが中~低い層では、 「仕事内容・負荷」よりも、「仕事と報酬が見合わない」「給料が低すぎる」といった処遇への不満が多く挙がりました。加えて、「人間関係がうまくいかない」「疎外感を感じる」など、職場での人間関係に関する内容も多く挙がりました(図6)。

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7. シニアの後悔、1位は「専門的な知識・能力を身につければよかった」28.7%、
 2位は「社外の人間関係を作ればよかった」23.2%(3つまでの複数選択による回答)

「もっとやっておけばよかったと思うこと」を3つまでの複数選択で聞いたところ、最も回答が高かったものは、「専門的な知識・能力を身につけ、さらに高めること」で28.7%でした。次いで、「今の会社以外の人脈や人間関係を作ること」の回答が多くなっています。定年制度までの年数で見ると、定年が迫るほど、「専門的な知識・能力を身につけ、さらに高めること」の回答が増加し、定年後は「今の会社以外の人脈や人間関係を作ること」の回答が多くなる傾向があります(図7)。定年を境に、後悔の内容も変化することが見てとれます。

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8. モチベーションが高いシニアは新しい知識を身につけ、孤立感が低く、身体・精神面で健康

現在の仕事や生活全般について聞いた結果、モチベーションの高さによる違いが示されました。「成果を出している」「知識や能力・経験が活かせている」などの成果や専門性に関する項目、ならびに「知識や能力を身につけるために時間を使っている」などの自己研鑽の項目で、モチベーションの高さによる差が目立ちました。人間関係においても差が見られ、モチベーションの低いシニアでは「孤立しているように感じることがある」の回答が多くなりました。さらには、「精神面での健康状態はおおむね良好である」「身体的な健康状態はおおむね良好である」などの心身の健康や、「趣味や運動、地域の活動など仕事以外の活動も行っている」といった私生活に関する項目でもモチベーションの高さによる違いが見られ、生活全般において差異があることが示されました(図8)。

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9. 役職の高いシニアほどモチベーションが高い

仕事へのモチベーションについて現在の役職別で見ると、部長クラス・本部長クラス以上の層は、モチベーチョンの高い人の割合が半数を超える高い数値を示しました。一方、一般社員では、モチベーションが高い人の割合は27.9%にとどまり、低い人が39.6%と4割近く存在する結果となっています(図9)。役職によるシニアのモチベーションの違いが見てとれます。
※モチベーションについては、「今の仕事にやりがいを感じますか」という質問への回答に基づき、高・中・低のグループがそれぞれ同数になるように設定しています。そのため、以下のグラフの「全体」は高・中・低が均等の割合になっています。

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10. 職場で果たしている役割は「メンバーの一員」が突出、シニア本人の認識と上司の期待にギャップ

自分が職場で果たしている役割について2つまでを選択してもらったところ、最多回答は「メンバーの一員として業務を遂行する」で、53.4%と突出する結果となりました。次点の「知識や技術・経験で職場に貢献する」は26.1%、続く「メンバーのサポートをする」は18.3%、後述する「上司が求めている役割」(項目14参照)で最多であった「知識や技術を次世代に継承する」は18.1%にとどまり、シニア本人の認識と上司の期待にギャップがあることが示されました。定年後再雇用のシニアでは、「知識や技術を次世代に継承する」の割合が高くなる傾向はありますが、3割には届いていない状況です(図10)。

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■上司から見たシニアのモチベーション
ここからは、担当部門の中に55歳以上の社員がいる管理職208人の回答を提示します。
回答者には、部門に所属する55歳以上の社員の中から1人を選んでもらい、その人に対する評価を聞きました。

11. 上司から見たシニア、モチベーションが高い人は42.8%、課題は「成果」「柔軟性」

シニア社員について、モチベーションや仕事ぶりを評価してもらったところ、「やりがいを感じていると思う」という回答は42.8%でした。その他の項目で肯定的な回答が多かったのは「職場で良い人間関係を築いている」で58.7%が「よく当てはまる」「やや当てはまる」と回答しました。一方、「期待されている成果を出している」「変化に対して柔軟に対応している」については、それぞれ45.7%、45.2%と半数を割りました。上司からシニアへの評価は、人間関係と、仕事の成果や柔軟性に関しては若干の差があることがわかります(図11)。

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12. 上司から見たシニアの待遇、報酬は仕事ぶりに見合っている61.5%、低すぎる18.3%、高すぎる20.2% 従業員数20~100人未満の企業では上司の27.1%がシニアの報酬は「低すぎる」と回答

シニア社員の報酬や待遇が仕事ぶりに見合っているか否かを聞いたところ、「仕事ぶりや成果に見合ったものである」が61.5%で最多でした。「低すぎる」「高すぎる」は18.3%、20.2%と、ほぼ2割で変わらない結果でした。所属企業の従業員数別にみると、20〜100人未満の企業では、上司の27.1%がシニアの報酬は「低すぎる」と回答しており、小規模企業の現状や課題がうかがわれる結果となりました。(図12)

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13. 上司からの評価「働き続けてほしい」78.8%、一方で「異動・退職したほうが良い」21.2%「このまま働き続けてほしい」のは「責任を果たし」、「良い人間関係」を作っているシニア

シニアの今後の雇用について聞いたところ、「働き続けてほしい」(合計)は78.8%と8割近くを占めました。そのうち「このまま今の職場で働き続けてほしい」は48.1%と全体の半数近くに及び、シニア社員の継続雇用が求められている現状が明らかになりました(図13-1)。「このまま今の職場で働き続けてほしい」と回答した層では、該当のシニアへの評価が「担当業務の責任を果たしている」87.0%、「職場の中で良い人間関係を築いている」79.0%と、他層に比べて高い割合を示しました(図13-2、13-3)。
一方で、「異動・退職したほうが良い」という回答も21.2%ありました。異動や退職を示唆する層では、前述の担当業務の責任や人間関係の項目の評価が低い結果となりました(図13-2、13-3)。これらの結果から、「責任を果たしている」「良い人間関係を築いている」シニアは、上司から働き続けてほしいと考えられ、逆の傾向を持つシニアについては上司が異動・退職を希望していることが明らかになりました。

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14. 上司からシニアへの期待「次世代への継承」、現実と期待にギャップ

シニアが「今果たしている役割」と「もっと意識してやってほしいこと」について上司に聞いたところ、明確なギャップが見られました(図14)。 現在果たしている役割は「メンバーの一員として業務を遂行すること」が39.4%で最多でした。一方、上司が「もっと意識してやってほしい」と期待する役割は「知識や技術を次世代に継承する」ことが30.3%で最多となりました。 この結果は、シニア本人の認識(項目10参照)とも一致しており、シニアの役割について現実と期待にギャップがあることが明らかになりました。また、「独自の着眼点や改善案などで新たな視座を示したり、効率化を推進する」についても、現実5.8%、期待15.4%と約3倍のギャップが見られました。

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15. 上司のシニア対応、成功したと感じるのは①後輩への技能継承、②敬意を示す、③経験を活かす采配、④環境・処遇改善

 「これまでに行った施策や言動でシニア社員にとって効果的だったと思われること」について、自由記述で回答を求めたところ、回答内容は以下の4つに分類されました。①「部下に営業の指導をしてもらう」などの「後輩への指導・技能継承」、②「信頼していることを伝えた」などの「敬意を示す・モチベーションを保つ」、③「経験を活かしつつ目標への流れにうまく乗せていった」などの「経験を活かした采配」、④「柔軟な職務・給与設計」などの「勤務環境の整備・処遇改善」の4分類です。この結果から、シニアには技能の継承を意識してもらいつつ、敬意を示し、経験を活かすように采配し、柔軟に勤務環境や処遇を改善することが、モチベーションを高める効果的なマネジメントにつながることが示されました(図15)。

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【調査対象者について】

全国の55歳以上でフルタイム勤務をしていると回答したシニア436人と、担当部門の中に55歳以上の社員がいると回答した管理職208人にアンケート調査を実施しました。

【シニア】
55歳以上でフルタイム勤務をする436人に回答を依頼しました。条件をそろえるため年代(5歳刻み)と所属企業の従業員規模(20~100人未満/100人~1,000人未満/1,000人以上)について、それぞれ同数になるように設定しています。

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【管理職】
担当部門の中に55歳以上の社員がいる管理職208人に回答を依頼しました。所属企業の従業員規模(20~100人未満/100人~1,000人未満/1,000人以上)がそれぞれ同数になるように設定しました。

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<まとめと提言>
「定年の崖」へのケアとシニアの役割「次世代への継承」を考える
シニア以外の社員への影響を考慮する

本調査では、55歳以上のシニア層とシニア社員の部下を持つ管理職層に焦点を当て、シニア社員のモチベーションの現状と課題、モチベーションの支えと阻害要因、管理職から見たシニア社員のモチベーションを明らかにしました。以下、調査結果のまとめと今後の方向性についての提言を示します。

1. 「定年の崖」へのケアと報酬や待遇の適正化

今回の調査では、定年直前にモチベーションが落ち込み、再雇用直後に再び浮上するという、シニア社員の不安定な心理状態が明らかになりました。これは、キャリアの大きな節目を前に多くの社員が不安を抱える「定年の崖」とも呼べる現象です。企業は、定年を単なる雇用契約の区切りではなく、「経験を活かし次世代への継承を担う新たな役割の始まり」と再定義し、この移行期間を組織として戦略的に支援することが不可欠です。例えば、定年を迎える数年前からキャリアデザイン研修や上司との面談機会を設け、社員が自身の経験やスキルを棚卸しし、次のステージを主体的に描けるようサポートすることが求められます。こうした取り組みは、シニア社員のモチベーションやエンゲージメントを高めるだけでなく、組織全体の知見の継承にも繋がります。また、再雇用後の報酬減額がモチベーションを大きく左右する実態も浮き彫りになりました。特に、減額幅が大きいほど意欲が低下する傾向が見られます。シニアの報酬や待遇について、仕事ぶりや成果に見合った適正な水準を見直すことも必要でしょう。

2. 職場環境の整備と内発的モチベーション支援の両輪で相乗効果を

シニアのモチベーションと相関が大きかった項目は、居場所や上司などの職場環境にかかわるものと、感謝されるなどの内発的モチベーションにかかわるものの2つに大別されました。以下、それぞれを見ていきます。
職場環境:居場所、人間関係、上司の相談のしやすさ
シニアのモチベーションと相関が大きかったことの1つは、職場に居場所があること、人間関係がいいこと、上司が相談しやすいことなどの職場の環境要因でした。こうした環境を整えることはシニアのモチベーションを高めるだけでなく、職場全体にとってもポジティブな影響があるでしょう。職場における居場所感の研究*によれば、居場所感の要素は役に立っているという「役割感」、居心地の良さを感じる「安心感」、自分を見失わないという「本来感」であるとされています。管理職は、シニア社員はもとより部門のメンバー皆がこうした感覚を持てているかに配慮し、職場の人間関係に目を配り、自らの相談のしやすさについても再考する必要があるでしょう。
*中村准子・岡田昌毅2016 企業で働く人の職業生活における「心理的居場所感」に関する研究 産業・組織心理学研究,30(1),45-58.
内発的モチベーション:感謝されること、役に立っているという実感
「相手から感謝されたり、喜ばれたりすることがある」という項目がシニアのモチベーションとの高い相関を示し、自由記述で求めた回答にも、「感謝されたとき」にモチベーションが高まるという記述が最も多く見られました。また、特にモチベーションが高い層では「役に立っている」ことがモチベーションの支えであることも示されました。これらは、前項の環境要因とは別の、いわば仕事そのものの喜びや面白さに関わる要因といえます。環境要因が個人を外側から支えるとすれば、仕事の喜びや面白さは内発的な要因として、個人の内側からモチベーションを高め、行動を促進します。組織としては、シニアが仕事の喜びや面白みが感じられる仕組みを整えることや、社内に感謝や互いへの称賛などが自然にやりとりされる風土を作ること、社員教育などによる能力向上で成果を挙げることをサポートし、役に立っている感覚を得られるような体制を作ることなどが有意義と考えられます。

3. 専門性を身につけ、社外の人間関係を作る

シニアが後悔することとしては、「専門的な知識・能力を身につければよかった」、「社外の人間関係を作ればよかった」が最多の回答でした。前者の専門性は、前述の居場所感や役に立っていることの実感にも通じる内容といえます。自身の専門性に自信があれば、職場での居場所の実感や、役に立っている感覚を得られやすいでしょう。社外の人間関係については、特に定年後再雇用のシニアで回答が多くなる傾向がありました。会社との関係が変化する再雇用というタイミングを経て、会社以外の人間関係の重要さを認識することになったとも考えられます。シニアのみならず、どの年代の働く人にとっても示唆深い調査結果です。仕事の中で自身の専門性を磨き、かつワークライフバランスを整えて、社外の交流を持つことが大切であるといえるでしょう。

4. 「次世代への継承」、現状に即した対策を

管理職がシニアに期待する役割は「次世代への継承」でしたが、現実の役割は「メンバーの一員」であり、期待と現実の間にギャップがありました。組織の維持・発展を考えると、シニアの技術や経験を次世代に継承し、組織の価値として蓄積するのは非常に重要なことであり、このギャップは課題といえます。ギャップの解消に当たっては、まず次世代への継承が行われていない職場の現状を把握する必要があります。例えば、担務が忙しく、継承までできない、継承すべき人がいない、などの現実的な状況があるのかもしれません。現状に応じて、継承を重要な業務と位置づけ、評価の対象としたり、継承の場を設けたり、また継承と同時にシニアが新しい技術や知識を獲得するサポートをしたりするなど、必要な対策を講じることが求められます。

5. 上司の成功事例を共有し、学び合う

本調査では、管理職が「シニア社員にとって効果的だと感じた施策や言動」について、多様な自由記述が寄せられました。記述を集計した結果、シニアに技能の継承を意識してもらいつつ、敬意を示し、経験を活かすように采配し、柔軟に勤務環境や処遇を改善することが、モチベーションを高めるためのマネジメントであることが示されました。また、その手法として「信頼していることを明示的に伝える」、「経験を積極的に質問し、課題解決に活用する」といった個別の細やかな対応や、「加齢に応じた柔軟な職務・給与設計」などの組織の制度面での対応などさまざまなアプローチがあることもわかりました。この結果からは、組織や職場環境、シニア本人の状況によって最適な方法は異なるであろうことが推測されます。したがって、管理職同士が実際の工夫や成功事例を定期的に共有し合う場を設け、互いの知見を学び合い、シニア一人ひとりへの対応を考えることが、より一層多様で質の高いシニア活躍支援の実現につながるといえるでしょう。

6. シニア以外の社員への影響を考慮する

シニア以外の社員にとって、シニアは「将来の自分の姿」であり、「共に働く同僚」でもあります。自分が将来どのように仕事ができるか、どのような待遇を受けるかという視点から見れば、シニアが生き生きとして、適正な処遇を受けている様子を見ることは、その職場での自身の長期的なキャリアビジョンの形成につながり、モチベーション向上に寄与するでしょう。また、共に働く同僚としては、シニアが自らの役割を果たし、成果を上げていることが一緒に働くことへの納得感や楽しさにつながるでしょう。シニア以外の社員のモチベーションを維持・向上させるためにも、シニアがモチベーション高く働き、その結果、役割を果たすことができ、適切な待遇を受けることは重要といえます。

結びに

シニアという人生のステージは誰にでも訪れます。管理職をはじめ、まだシニアの年齢に至っていない社員も自分ごととして捉えることが大切でしょう。どの年齢でも働きやすく、モチベーションが高い職場を作ることが、結果的に組織の活力と生産性を上げることにつながります。

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