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観光MaaSで目指す、持続可能な地域づくりと観光マーケティング

SDGsに貢献しながら「モビリティ×観光アクティビティ」の未来を創る

地方の観光地は、二次交通の不便さや周遊観光におけるアクセス手段不足等、交通手段に関する課題に悩まされています。それらの課題解決や観光客の満足度を上げるための取り組みとして、最近脚光を浴びているのが観光MaaSです。そんな中、日本で初めての環境配慮型・観光MaaSの事例として2021年10月28日に「NIKKO MaaS」がスタートし、モデルケースとして各方面から注目を集めています。

今回はJCDのMaaSにおける第一人者であるMaaS領域事業開発プロデューサー 黒岩 隆之が、これまでの取り組みや観光MaaSの最新事例とともに、その未来の姿や目指すべき方向性についてお伝えしていきます。

  1. MaaSと観光MaaS
  2. 日本で初めての環境配慮型・観光MaaS「NIKKO MaaS」
  3. 観光MaaSが実現するDXと観光マーケティング
  4. 観光MaaSで地域活性と地域課題解決を目指し、SDGsにも貢献

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PROFILE
黒岩 隆之黒岩 隆之 
株式会JTBコミュニケーションデザイン
コーポレートソリューション部 プロデュース局 MaaS領域事業開発プロデューサー

株式会社JTB法人東京(当時)にて旅行営業に携わった後、環境マーケティングにおけるプロデューサーに就任。2018年よりJCDにてEVモビリティ観光活性事業やカーボンオフセット事業に携わる。現在は観光分野におけるMaaS開発や情報銀行の社会実装といったデータビジネスを中心に精力的に活動。JTBグループにおけるMaaS関連事業の第一人者としてMaaSプロジェクトチームを率いている。

(聞き手)日比野 慎治
株式会JTBコミュニケーションデザイン
コーポレートソリューション部 プロデュース局 アカウントプロデュース課長

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※社名・肩書きは2021年11月時点のものです。

1 MaaSと観光MaaS

日比野
まずはじめにMaaSと観光MaaSを整理しましょう。それぞれの違いについて教えてください。

黒岩
MaaSとは「Mobility as a Service」の略なので、基本は自家用車以外の移動手段である鉄道やバスと言った公共交通機関とレンタカー等の移動サービスを組み合わせて、その検索・予約・決済等をワンストップで行えるサービスです。自家用車を使わずとも、IT技術を駆使して公共交通だけで移動できるようにする仕組みとして、元々は環境対策やIT・通信の先進国フィンランドで発祥した考え方・概念でした。

MaaSというと移動手段や新しい交通サービスと捉えがちですが、観光MaaSは移動先の目的そのものが重要になってきます。その目的を達成するために様々なモビリティサービスを組み合わせて提供できる仕組みこそ、観光MaaSと言えるでしょう。改めて考えてみると移動そのものを目的としている人は、実はあまりいません。移動はあくまでも手段であって、人はその先の目的が大事です。旅行として考えるとわかりやすいでしょう。旅先での目的があって、人は移動します。もっと具体的に示すならば、移動手段としての飛行機や目的地の宿泊先が1つになったパッケージ旅行商品を、デジタルを用いてオンデマンドでリアルタイムに提供できるサービス・仕組み、それが観光MaaSです。

◆参考記事 MaaSで変わる地域交流・観光マーケティングの未来
https://www.jtbcom.co.jp/article/chiiki/1049.html


日比野
観光MaaSは必ずしもモビリティサービスの提供だけに限らないということですね。

黒岩
1つのプラットフォームでモビリティサービスを提供するという仕組みについては、既に世の中に存在しています。具体的には、交通系ICカードがあれば、鉄道をはじめとした様々なサービスを利用できるのはご存じの通りです。また移動に際しても、ひとつの検索アプリをスマートフォンに入れていれば、行きたいルートがすぐわかります。さらに検索するだけでなく、予約までも行えるといった機能もすでに存在しています。

ただ移動先の目的と言った部分(飲食店の予約や施設の入場チケット購入等)のデジタル化はなかなか進んでおりません。MaasというモビリティサービスのみがDX化されてきている現状において、私はこの目的という部分が観光MaaSにおいて、デジタルプラットフォーム上に同時に組み込まれる必要があると考えています。

JCD 黒岩
JCD 黒岩

2 日本で初めての環境配慮型・観光MaaS 「NIKKO MaaS」

日比野
2021年10月28日にスタートした「NIKKO MaaS」の事例について、JCDが関わった背景について教えてください。

黒岩
元々は私たちが観光MaaSを推進する前段として、電気自動車を普及促進させるための充電インフラ整備に力を入れてきました。およそ10年前からガソリンスタンドに代わる電気エネルギーを供給する充電ステーションを、様々な観光地に設置することを進めており、現時点で全国約1600基を設置しました。この時に各地や関係各社とのネットワークを作れたことが、今に繋がっていると思います。インフラ整備は、単独で当社のような会社だけで仕掛けることは難しく、様々な自治体やテクノロジーを持つ企業をネットワークでつないで作り上げる必要がありました。

この分野において全国的にコンソーシアムが広がっていく中で、栃木県においても、日本有数の観光地であり、国定国立公園でもある日光地域に白羽の矢がたちました。日光は以前より交通渋滞等の問題を抱えていたこともあり、「環境を保全しながら、観光を促進する」といった観光MaaSの目的に見合った訳です。観光客に公共交通を使って日光まで来ていただき、現地では電気自動車(EV)のカーシェアリングを利用する・・・といったようにインフラ自体を変える新しい仕組みを創りだしていく必然性がありました。

充電器設置のビジョンとして、電気自動車の普及促進を広域にわたりまんべんなく行うのではなく、観光地の中でも特に環境保全と観光促進の両立が求められる国定国立公園において実施していこうということになりました。そこから波及して、EV推進協議会が立ち上がりました。

電気自動車を普及させるためには、単純に充電器だけを設置するだけでは根本的な観光地の課題解決にはつながりません。交通公共機関を使いながらも、自家用車と同じアクセシビリティを要しながら、観光客が日光地域で周遊できる仕組みを、エコロジーを機軸にして創り上げることが求められるのです。これを実現させることで、新しい消費喚起や交通弱者(自家用車を利用できない方やインバウンド観光客等)の利便性向上にも役立てられます。

また観光地で電気自動車に提供されるエネルギーを、太陽、温泉熱、風力や水力等地産地消のエネルギー活用によって賄うことができれば、さらにサステナブルといえます。これがエコツーリズムの思想につながり、環境に優しい観光地作りへと発展していきます。

こうした考え方を提起したところ、栃木県や関係企業ばかりでなく環境省までを含めた多くの方から賛同を得て、栃木県庁、東武鉄道、トヨタレンタリース栃木、オリックス自動車、JTB、JCDの6社のコンソーシアムにより「NIKKO MaaS」がスタートしたという訳です。

◆2021/9/30 リリース
国内初の環境配慮型・観光MaaS「NIKKO MaaS」が10月28日(木)サービス開始!
https://www.jtbcom.co.jp/news/2021/1223.html

◆「NIKKO MaaS」サービスサイト
https://www.tobu-maas.jp/lp

サービスイメージ

日比野
6社コンソーシアムのなかでのJTBグループ、そしてJCDの役割はどういったところでしょうか?


黒岩
当初は電気自動車の普及を目指すというところからスタートしましたが、本来日光は観光地としてどうあるべきかということに議論が進んでいったのです。そこで観光MaaSまでを視野に据えて取り組むべきだと考え、JCDが舵取り役を担いました。

「見る、遊ぶ、食べる」といった観光地での着地型コンテンツの中で「見る、遊ぶ」に特化したプラットフォーム。こうした移動のサービスと移動先の目的のサービスをデジタルでつなげてワンストップで提供する仕組み自体は、JTBが提供しています。JCDでは電力の小売事業に取り組んでいる関係で、まずは充電器のインフラ整備を担当しました。最終的には充電器を設置する宿泊施設の電力供給までを整備して、将来的にはそこで供給する電力自体を再生可能エネルギーでまかなうことができれば、よりサステナブルな観光地づくりに繋がるのではと思っています。

NIKKO MaaS スマートフォンサイトキャプチャ
NIKKO MaaS スマートフォンサイトキャプチャ

3 観光MaaSが実現するDXと観光マーケティング

日比野
「NIKKO MaaS」は、観光MaaSとしてお客様への利便性を高めるというサービスに加え、環境への配慮にも重点がおかれている点がよく理解できました。この「NIKKO MaaS」は今まで誰もやってこなかった新しい取り組みであり、さらに5年先・10年先を見据えての長期的なプロジェクトになりますが、JCDがこの事業を通して今後目指している点について教えてください。


黒岩
まずは「NIKKO MaaS」において、観光MaaSの代表となる事例を作りたいと考えています。これが上手く行けば、横軸での展開が可能です。日本には国定国立公園が数多くありますが、いずれの場所もモビリティサービスが脆弱です。そうであっても国定国立公園は観光地としてそれなりに観光客が集中しているのです。これは大変興味深いと思っています。つまり全国にある観光地が日光と同じような状態なので、ここでの成功事例ができれば、他の観光地にも観光MaaSが波及しやすくなるでしょう。

今はまだ鉄道事業者が中心となって、その沿線上においてMaaSの実証実験が行われている段階です。実は、移動の目的までを取り込んだ、旅行会社視点での観光活性化に資する手段としてMaaSを利用するといった取り組みは、まだ多くは有りません。ですからJCDがいち早くビジネスモデルを確立していきたいですね。いわば"究極のオンデマンド旅行をつくる"と言えば良いでしょうか。私としては、観光MaaSの仕組みを創るための先駆的な役割を果たしていきたいと思っています。

さらに観光MaaSの実現によって得られるデータの存在は、大きな意味を持ってきます。いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)です。今ではデジタルデバイスを使っての消費行動が普通に行われています。そこから購入履歴や消費傾向等のログが採れるのは周知のことです。これと同じことがモビリティサービスを使って、できるようになるでしょう。旅行をしている最中の消費行動等が、車を媒介にしてコネクティングされます。MaaSという世界の中でデジタルを通して行先を検索したり、モノを買ったりできるようになれば、デジタルマーケティングを駆使して優良見込み客を見いだす等のマーケティングが可能となります。これらが旅行というコト消費の中でもできるようになるのです。こうした世界を実現していく上で、JCDが先駆けとなって仕組みをデザインしていくことが、私たちが観光MaaSに取り組む大きな目的と思っています。

JCD 日比野
JCD 日比野

日比野
MaaSに関連して、他に新しい実証実験も取り組んでいるんですよね。

黒岩
様々なモビリティサービスと移動先の目的をデジタルプラットフォーム上でワンストップに提供する統合型タイプの観光MaaSは、多くの事業者がコンソーシアムを作り共同で進めています。こうした動きとは別に、個別にモビリティサービスを提供する企業がMaaSの世界にも新しく参入してきました。

例えば自動車を例に挙げてみましょう。これまでクルマは買うものでしたが、今後は利用する「サービス」として、人々の意識が転換していくでしょう。こうしたことからクルマを通して得られるとサービスをMaaSとしてワンストップで提供していく動きがあります。こうした業界の人たちと議論していくなかで、「モビリティコマース」という新しい考え方が出てきました。移動しているクルマ自体をひとつの媒体として捉えて、その中で様々な情報を発信することで、人々の行動変容を起こさせるようにするという考え方です。

これらを2020年にNTTデータとオリックス自動車、そしてJCDが共に組んで、レンタカー利用者向けのコンシェルジュサービスの実証実験を行ってきました。この成果をもとにして2022年の4月以降にさらに事業化への模索を進めていきます。

新たな移動体験を提供するレンタカー旅行向けコンシェルジュサービス 実証実験イメージ
新たな移動体験を提供するレンタカー旅行向けコンシェルジュサービス 実証実験イメージ

◆2021/9/28 リリース
NTTデータ・オリックス・JCD 新たな移動体験を提供するレンタカー旅行向けコンシェルジュサービス、実証実験で有用性を確認
https://www.jtbcom.co.jp/news/2021/1218.html

4 観光MaaSで地域活性と地域課題解決を目指し、SDGsにも貢献

日比野
今後、JCDとして観光MaaSを通して実現したいビジョンについてお聞かせください。

黒岩
観光MaaSは今まで述べてきたように、デジタルを活用したまったく新しい取り組みです。ともすれば技術指向に陥りがちになりますが、あくまでお客様指向で捉え、その地域の課題解決にどう向き合っていくべきかという思いを大切にしています。マネタイジングポイントとしては着地発想で、いわゆる地域活性ビジネスとして観光MaaSを通してJCDが統合的・総合的に提供できるような立ち位置になれるようにしたいと思います。また同時に、本事業を通じてSDGs達成へ取り組んでいきたいと思っています。

今後、観光MaaSを基軸に横展開をしていきたいというお客様は、ぜひJCDにご相談ください。「インバウンドを取り込みたい」「ターゲットは首都圏の高齢層のご夫婦である」というように、それぞれの目的や到達点は地域によっても様々でしょう。お客様それぞれの課題や要望に対して、私たちは予算策定やテクノロジー、マーケティング、プロモーション、そして将来的な戦略のコンサルティングまで全てを包括的に提供いたします。

社内ではプロジェクトチームも立ち上げています。プロモーション事業やイベント事業に関わるメンバーも巻き込みながら、地域活性とサステナビリティ、どちらの実現もしながら観光マーケティングもかなえる、観光MaaSを一丸となって推進していきます。

日比野
MaaSはとてもスピード感をもって進んでいるマーケットです。JCDとしてもお客様やステークホルダーの意向をしっかりとキャッチして、今後事業としてしっかりと確立していきたいですね。




JCDは、観光MaaS事業の推進を通じて、SDGs目標9.「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標11.「住み続けられるまちづくりを」、目標17.「パートナーシップで目標を達成しよう」、に貢献してまいります。また、その一環で電気自動車充電器設置・普及促進を行い、次世代における脱炭素社会の実現を目指します。また、供給するエネルギーを地域由来の再生可能エネルギー(RE100)にする事で、目標7.「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」目標13.「気候変動に具体的な対策を」のゴールに貢献します。

◆JCDの取り組むサステナビリティ

◆JCDの取り組むサステナビリティ
https://www.jtbcom.co.jp/company/sustainability/



MaaSプロジェクトチーム

プロモーション事業、地域活性事業、イベント事業、CRM事業等、様々な知見を持つメンバーからなるMaaSプロジェクトチーム。観光MaaSという手段を用いて、観光客の移動の総量の最大化を行う事で、観光による地域経済の活性化、地域交通インフラの維持による、持続継続的な地域社会の発展、地域課題の解決に努めてまいります!観光MaaSの活用にご興味の皆様、様々な自治体様やソリューションをお持ちの企業、大学の皆様等からのご相談をお待ちしております。

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