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MaaSで変わる地域交流・観光マーケティングの未来

「Super City/Smart City OSAKA 2020」Mobility/MaaSテーマセッション

未来都市のスマート化実現に向け、最先端技術とサービスの未来を探る展示会「Super City/Smart City Osaka(スーパーシティ・スマートシティ オオサカ)」。2020年7月2日〜3日の2日間に、様々なテーマを切り口にした20以上のカンファレンスが開催されました。その中でも注目を集めたテーマ"Mobility/MaaS"について「観光産業から捉えた、MaaSが引き起すパラダイムシフトと、データから導き出されるモビリティサービス、観光戦略等の今後の展望について。」と題し、株式会社JTBコミュニケーションデザイン 営業推進部 アカウントプロデュース局 マネージャー 黒岩隆之がオンラインでカンファレンスを実施しました。

MaaSは交通システム(手段)の大変革のみならず、移動の先の目的をも巻込んだ新たなサービスを産みだし、従来の観光産業自体の在り方を変えるものです。また、移動手段や観光客自体の行動を可視化することで、データに基付く観光戦略やモビリティ政策等のパラダイムシフトにもつながる可能性を秘めています。

本カンファレンスでは、情報銀行やレスポンシブル・ツーリズム等の観点も交えながら、Afterコロナ、Withコロナも見据えた観光地の新たな在り方についても考察しています。

オンライン展示会「Super City/Smart City Osaka」での画面キャプチャー
オンライン展示会「Super City/Smart City Osaka」での画面キャプチャー

新しい交通システムの概念MaaS

MaaS(mobility as a service)とは、あらゆる交通機関をIT技術を用いてシームレスにつなぐことで、人々が利便性と効率を享受できるシステムです。元々は、環境政策の先進国でもありIT立国でもあるスウェーデンで、環境への配慮及び、IT技術による新たな産業育成という国家プロジェクトとして始まりました。MaaSではICTを活用したシステムにより、例えば今まで航空機や鉄道、バス、タクシーといった移動手段それぞれを個別に予約していたものが、一元的に管理できるようになります。

このMaaSという概念は、100年に1度の大変革を交通システムにもたらすと言われています。日本においても国家戦略として位置付けられ、様々な企業連合や政府、自治体が関心を寄せています。内閣官房の全体戦略でも、いわゆる"Society 5.0"の実現に向けDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていく上で、MaaSを国の新成長戦略の柱として活用することが確認されています。

主に経済産業省と国土交通省がそれぞれMaaSの構想を進めています。経済産業省では「IoTやAIを活用した新しいモビリティサービス」として、カーシェア・オンデマンドバス・マイクロトランジット・相乗りタクシー、そして貨客混載・ラストワンマイル配送無人化など、技術テクノロジーに主眼をおいています。これに対し国土交通省では、⾼齢者や障がい者、訪⽇外国人を含むあらゆる人が新しいモビリティサービスを利用し、どこでもシームレスかつ⾃由に移動できる社会を実現することで、人々の豊かな暮らしを交通面から解決するというサービス・社会課題解決面からのアプローチをしています。

MaaSは"移動の最適化"と捉えられがちですが、経済効果の面でも多くのポテンシャルを秘めているのです。

移動手段と目的地を組み合わせてワンストップで提供していくMaaSは、自動車関連支出(自動車の販売)が11.3兆円/年なのに対し、車を使って移動した先の目的(通勤や観光、買い物など)まで含めて試算すれば、国内では101.9兆円/年規模のマーケットになります。(三菱総合研究所作成データより)

移動する時間のムダをなくすという点から捉えると、MaaSを活用することで、今まで移動するためだけに時間を費やしていたものが、他のサービスと連携することで莫大な経済波及効果をもたらすのです。

Maasについて語る黒岩

MaaSがもたらすパラダイムシフト

MaaSが進んでくると、ビジネスにはどのような影響があるのでしょうか。例えば旅行業界では、今までのビジネスモデルは移動や宿泊、旅行先でのサービス・コンテンツを、ひとつのパッケージ「旅行商品」として提供していました。これらを店頭やWEBなどで販売していたわけです。このビジネスモデルでは、お客様との接点は旅行という非日常にしかありませんでした。しかしMaaSが進むと、これまでは「旅行商品」のパーツの一つであった鉄道・自動車などの移動手段が、宿泊やコンテンツといった目的を包括して、IT上において顧客にワンストップで価値を提供していくことになります。

顧客への接点・チャネルにおいても、たとえば日常で使うような駅や移動する車内、駅サイネージなどのサイバー空間、交通系のアプリを使って商品を販売していくなど、従来のビジネスモデルとは大きく変わってきます。この流れが進むと現行の旅行業自体の存在意義がなくなり、パラダイムシフトが求められるでしょう。

 

MaaSが進むことによるパラダイムシフトのイメージ
MaaSが進むことによるパラダイムシフトのイメージ

 

MaaSは移動と目的を組み合わせてIT技術によってワンストップで提供するものです。ビジネスモデルとしてはMaaS上で検索や予約、決済、レコメンドといったコンテンツをプラットフォーム上で機能させ、個々のユーザーに最適なサービスを一括して提供できる仕組みになります。旅行会社としては、MaaSプラットフォーマー及びコンテンツ(入場、体験、飲食、拝観等)の着地サービスプラットフォーマーとしての立ち位置になることも求められてくるはずです。

これからの観光地のマーケティング

では、観光マーケティングにおいては、なぜデータが必要となるのでしょうか?そもそも観光というものは、本来地域で完結するものでした。今でこそ域外の来訪者やインバウンド需要といったニーズにあわせてマーケティングしていますが、昔は旅館などの宿泊施設は、その地域住民が新年会や忘年会、結婚式などで利用することで成り立っていたのです。地元住民相手ですから、常に顧客の顔が見えている。マーケティングといっても、勘や経験、人間関係に頼ることが多く、マーケティングコストをかける必要がなくても経済が回っていました。その後、少子高齢化、地域からの人口流出、人間関係の希薄化、地域イベントの消失などで、域内経済だけではマーケットが機能しなくなってしまったのです。

こうして、各地域や宿泊施設は域内経済のシュリンク状況を打破するために、その活路を都会などの域外来訪者や外国人のインバウンド需要に求めるようになりました。すると今まで域内マーケティングで通用していた方法が、相手の顔が見えない状況になって通用しなくなる。これまで以上に顧客理解が必要となったため、"顔の見える化"をさせるためには、新しいコミュニケーションツールやデータが、マーケティングを考える上で重要な要素となったのです。

これは地域・都市間においても同じことが言えます。今まで地域とは定住地であり、育成地(故郷)として位置付けられてきました。物理的に相手の顔が見えるので、デジタル化を急ぐ必要はありません。ただ近年では、進学や就職、医療といったリアルなサービスが地方に充実していないために、地域から都市部へ人口が流出しているのが現状です。地域住民と都市住民とでは物理的な距離がありますから、リアルに顔が見える交流というのは難しくなってくる。そこで、 地域と都市間での交流を進めるために、都市のOSや情報銀行、MaaSのような仕組み、カメラ・センサー・通信などの技術といったデジタルの力が求められることになりました。これによって地域においても訪問者の顔を「見える化」することで、地域と都市が同じ土俵に立つことができるのです。

ニューノーマルで変わる、都市と地域のあり方

次の展開として、ニューノーマルによる変数についてお話をさせていただきます。今、コロナ禍で働き方やモノの考え方が大きく変わろうとしています。職場や学校など「場所」に人を固定する必要がなくなりつつあります。都市にあるフィジカルな空間としての機能をバーチャルで埋めることができれば、都会でしか味わえない体験や働く場、勉学といったものが、地方においても充分に享受できるのです。これはECや映画・音楽などの世界をみればすでに明らかです。今まで以上に都市と地域のあり方が変わってきているのです。今後ますますデジタルを活かしてそれぞれを補完し、お互いの顔が見えるようにしていかなければなりません。

こうした状況が進むと、もはや就職や就学する先に居住地を構える必要がなくなります。その場合の住民票や住民税などはどのようになるのでしょうか?様々な問題がでてくるでしょう。今の制度の中ではうまくさばいていくのは難しいと思います。ですから本カンファレンスのテーマであるスーパーシティやスマートシティをかたちづくるデジタル化は、非常に重要なポイントとなるのです。

レスポンシブル・ツーリズム
観光客と一緒になってよりよい観光地を作っていく

また、観光地(地域)のあり方や変化を捉える上で、レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)という考え方があります。これは「来てくれる人は誰でもウェルカムです」という発想を切り替え、観光地側で「来てほしい」人を明確にイメージし、「来てほしい」人を中心に誘致していくことが重要となります。観光客は単なる「客」ではなく、観光地を構成する主体のひとつであり、彼らの⾏動によって、観光(ツーリズム)は良いものにもなるし、悪いものにもなるという考え方が、このコロナ禍以降ますます進んでいくでしょう。デジタル上で顧客の顔を「見える化」して、来て欲しい人だけにセールスをかける。こうして来ていただいた人が意識や⾏動にも一定の責任を持ってもらうことで、一緒になってよりよい観光地を作っていこうという動きが「レスポンシブル・ツーリズム」なのです。これを支えるのがMaaSであり、情報銀行であり、都市OSであり、スーパーシティ・スマートシティの役割だと考えています。

人間は移動することによって幸福度が高くなる!?

今後デジタル化が進んだとしても、リアルな移動がなくなるということはありません。人間の脳は「多様性や新規性のある移動」を検知すると、喜びや幸福感を生み出すことがある研究でわかっています。ほとんど移動しない人と移動が多い人とでは、移動する人の方が圧倒的に幸福度を感じるのです。しかもその移動自体、多様性があり、新規性があればあるほど、人間の脳は喜びや幸福感を多く生み出します。
このことからも、いかにデジタル化や技術が進歩したとしても、人間は根源的な欲求としてリアルな移動を求めていることがわかります。この移動したいという欲求と移動手段を、どう結びつけていくのか。今後のMaaSの展開を考える上で重要な課題となるでしょう。

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