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地域活性における真の「レジリエンス」を考える

地域ブランディングとは課題や現状に向き合うこと
観光にとどまらない最適なソリューション共創の事例

長引くコロナ禍において、各地域では観光需要低迷による直接的なダメージだけではなく、結果として特産品の消費が鈍化するなど、地域社会への影響も深刻になっています。
昨今、困難な状況に適応する過程や回復する能力をあらわす「レジリエンス」という単語が聞かれるようになりました。では、地域という文脈で考えたときに、それぞれの経済や観光のレジリエンスをどう考えていくべきなのでしょうか。

JCDで地域活性事業に長く携わってきた川杉と、自治体の課題解決のためのコミュニケーションプランニングに携わる小村が、地域における魅力創出の取り組みや、アフターコロナに向けた真のレジリエンスについて語ります。


  1. コロナ禍での観光業や地域の現状
  2. 地域の魅力を創出し、伝えたくなるストーリーを可視化
  3. 逆境の中で「レジリエンス」をどう発揮するか
  4. リアルの代替ではない!「オンライン×観光」での価値創造
  5. 地域課題の本質に寄りそい、最適な「ソリューション」を考える

1 コロナ禍での観光業や地域の現状

川杉
移動や対人接触が制限されたことで観光客が激減したことは、言うまでもなく大きな課題です。更にどんなことが起こっているのかをもう少し掘り下げますと、観光客が減ってしまったことで、外食産業や農林漁業、食文化など色々なところにも影響が出ている点があげられます。
そんな中で「レジリエンス」という言葉を「回復」と置き換えてしまい、コロナ禍を脱して元の地域に戻すためにどうするか、という議論が行われていたりします。

しかしながら、私たちは新しい価値や方法を生み出し定着させていくことこそが、真の「レジリエンス」なのだと考えます。コロナ禍を通じてデジタルが発展し、コミュニケーションそのものが急速に変化した社会環境を踏まえ、顕在化した課題を見直し、今まで目を向けていなかった改善点にも手を入れるべきですし、その絶好の機会だと思います。

例えば、以前の当社サイト記事でも紹介していますが、三重県特産の高級食材「伊勢まだい」がコロナ禍で消費されず、結果的に流通先がなくなってしまったときに、僕らは消費を促すだけでなく鯛の商品価値を伝えていくサポートを行いました。値段を下げることで消費につなげるという手段は、一時的な手段としては有効かもしれませんが、結果的にブランド力の低下にも繋がってしまいます。観光業にとどまらず、コロナ禍で苦しむ地域事業者を支援し、産業振興へと繋げていくことが、大きなミッションとなっていると思います。

◆過去記事 記憶に残る地域PRのカタチ"おうちで食の旅体験"
https://www.jtbcom.co.jp/article/chiiki/1121.html

本対談は、オンラインで実施しました
本対談は、オンラインで実施しました

小村
一方で、観光業においてもコロナ禍でのデジタルへの移行が加速化し、例としてはオンラインツアーの需要が伸びています。いわゆる旅行する前の体験、「タビマエ」体験の存在感が増大してきていると感じます。今までは、写真や動画を見たり、ブログを見たりして、その地域のことを想像していた人が、気軽に「タビマエ」体験ができるようになった一方で、「ぜひ行きたい」と思う場合もあれば、「わざわざ行く必要はない」という思考に至ってしまう場合も起こりうるため、選ばれる観光地になるためのハードルは上がってきているのではないでしょうか。

訪問の動機づけとなるのは、その場所でしか体験できないようなリアルな価値、本質的なもの。その地域にしかない魅力の強化・ブランディングが一層必要になってきていると思います。

2 地域の魅力を創出し、伝えたくなるストーリーを可視化

川杉
JCDの地域ブランディング事例の1つが、2019年から携わっている石川県能登エリアにある穴水町の地域活性化プロジェクトです。穴水町は、宿泊施設が数多くある地域ではないため、「観光地」としての価値を高めるにはハードルがあり、観光だけで地域経済効果を得るのは難しかったんですね。そのためまずは、観光も含めた複合的な地域としての魅力を洗い出し、地域の経済効果も高められるものがないかを模索した結果、穴水の「食」に焦点を当てることになりました。

穴水の牡蠣は、海水温が低く水深の深い能登湾で養殖されています。身が詰まっていて栄養価が高く、さらに旬が長いので5月くらいまで楽しめるのですが、全国的にあまり流通しておらず、ほとんど地元でしか消費されていないんです。

また、穴水町では能登ワインの製造も盛んなのですが、土の水はけが悪いのが課題でした。そこで、大量に余っている牡蠣殻を砕いて土に混ぜ込み、水はけがよくミネラルが豊富に土壌改良された葡萄畑でワイン用の葡萄が生産されています。穴水町の中で、食資源が循環しているというわけです。

穴水町ポータルサイト|生きている穴水
穴水町ポータルサイト|生きている穴水

穴水町 ポスター
穴水町 ポスター

今回はこのような穴水の代表的な特産物の背景にある歴史や特徴を踏まえ、穴水の「食」をテーマにしたストーリーとしてブランディングしました。さらに、「食」だけにとどまらず、歴史や生態系、文化などの魅力を総合的に発信していくために、キーワードとして「ガストロノミー」にも着目しました。食、歴史、文化、地形を含め、なぜその特産物が育まれているのか、料理も含めたその背景などから穴水の総合的な食資源を掘り下げ、その魅力を可視化していきました。それらのコンセプトを1枚のポスターとコピーライティングで表現し、コミュニケーションプラットフォームとしてのホームページを開設。美味しさを裏付け、伝えたくなるストーリーを記事などで表現するプロモーションを実施しました。

このように、地域の魅力を創出・強化し、発信することで関心を高めて、訪問の動機づけに繋げる仕組みを作ることができたと思います。

3 逆境の中で「レジリエンス」をどう発揮するか

川杉
実はこの穴水町、町にお住まいの方の人口は8000人ほどなのですが、毎年2日間で約5万人が来場し、約10万個の牡蠣がふるまわれる「雪中ジャンボかきまつり」というイベントがあります。

今年はコロナ禍で中止になってしまい、大量の牡蠣が行き場を失ってしまう状況になったのですが、先ほどの伊勢まだいの話と同じように、安く売り捌くだけでは商品価値が下がるだけ。穴水町のためにできることは何かないかと必死で考え、「穴水に来られないのであれば全国の方に牡蠣を送って、オンラインでかきまつりをやってしまおう!」と発案。穴水の牡蠣は5月頃までが旬なので、「オンライン牡蠣まつり」を2021年5月に企画し、クラウドファンディングで希望者を募ったところ、当初予測の171%を達成しました。港の牡蠣漁師の方や地元の関係者の方々とのリアルタイムでの中継や、家事代行マッチングプラットフォーム「タスカジ」の家政婦さんによる、絶品牡蠣レシピのデモンストレーション&料理体験などを通じて、自宅にいながら地域の魅力を感じ、双方向で穴水の食を体験していただけるイベントとなりました。結果的に、メディアの取材も殺到し情報が拡散。牡蠣を通じた穴水町全体のブランディングに繋げることができたと思います。

「オンライン牡蠣まつり」実施風景
「オンライン牡蠣まつり」実施風景

◆当日の開催レポートはこちら(タスカジ社サイト)

また、プロジェクトを通じて市場を通さないでも流通可能なDtoC(Direct to Consumer)の促進や、牡蠣のオイル漬けなどの加工商品開発にも繋がりました。流通の仕組みづくりができ、イベント後も牡蠣は売れましたし、牡蠣のオイル漬けを能登ワインとセットでストーリーを伝えつつ販売したらこちらも好評でした。結果的に、DtoCとしての将来的な販売方法や、商品開発を含めた事業を形にすることになったわけです。困ったときにこそ人は知恵が出るとも言いますが、ある意味コロナ禍をきっかけにしてDtoCや食を通じたブランディング、「牡蠣のオイル漬け」といった付加価値のついた加工食品をつくって収益を得るような発想が生まれたのだと思います。このようにお金と人が回り穴水町が元気になれば、将来の観光誘客による地域活性へと繋がっていくと考えています。

小村
「雪中ジャンボかきまつり」が中止となったとき、どうすればいいのかを考え、改めて価値を見つめ直し、将来の観光誘客への展開まで考えることができたのは、非常に大きな機会だったと思います。逆説的ですが、苦しい状況だからこそ、自分たちのあるべきものは何なのかということを考え、それを育てていけるかどうか。今後を見据えた大きな差がここで生まれてくるのだと感じました。

川杉
一般的には、元の観光の賑わいや収益へどう戻すべきが論じられているかと思いますが、私はコロナ禍という環境を踏まえて、そこから何を生み、新しくどんな成長をしていくのかということを常に考えています。
観光はその中のあくまで1つの現象であって、逆境の中で顕在化した課題解決や新しい価値も総合的に考えて、地域そのものに最適な方法や経済成長を選択していくことが重要だと思います。

今回、コロナ禍でこのような取り組みが行われ、地域の皆さんとこういった共通認識を持てたというのは、進化だと思っています。状況に順応して新しい価値と方向性をつくっていく大切さを実感しました。そういった意味では、穴水町では良い形の「レジリエンス」が発揮できたのではないかと思っています。

4 リアルの代替ではない!「オンライン×観光」での価値創造

小村
オンラインは日々進化していて、魅力の表現方法は変わってきています。VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などを活用したXR技術を使うことで、リアルを超えた価値提供が可能となっています。

オンラインが可能にする魅力、価値の体験例
オンラインが可能にする魅力、価値の体験例

まず空間軸を例にしますと、空から建物に舞い降りて屋根を通り抜ける・火山の火口に入ってみるなど、リアルでは絶対にできないことでも、オンラインでは不可能ではありません。神社仏閣の祭壇裏や劇場の舞台裏など普段いけない場所へ行くことも、年配の方や身体の不自由な方などを含め、オンラインなら誰でも参加可能です。

次に専門軸では、実際に旅しているときに、「牡蠣はどうやって育てるんだろう」、「牡蠣の本当に美味しい食べ方ってなんだろう」などと思っても、突然漁師の方に話しかけるのは仕事の邪魔にもなり、普通はできないです。そこで、その分野の専門家によるガイドツアー、スクーリングやレッスンなどの形式をコーディネートすることができれば、リアルではなかなかお話することがかなわない、その方にしか聞くことのできない話を楽しむことができます。

最後に時間軸です。先月当社サイトでもご紹介している「インバウンド向けの江戸時代の食文化コンテンツ」は、過去にタイムスリップするという、リアルを超えた体験をすることを目指したコンテンツでした。現在の魅力を感じてもらうだけでなく、それが過去にどのように形成されてきたのか発展の過程を知ることにより、今の魅力を一層深く味わっていただくことが可能になります。更に空間を超えたもの(空間軸)や、プロフェッショナルだからこそ提供できるもの(専門軸)を合わせれば、今のリアルの捉え方がかなり多面的に変わってきます。

このように、オンラインでしかできない体験を提供することで、「行きたい」という気持ちを高め、リアルな旅へと誘引する仕組みが実現すると考えています。

川杉
これは、リアルの代替=オンラインではないということですよね。穴水町の「オンライン牡蠣まつり」においても、この考え方は共通しています。漁師が獲った牡蠣を目の前で見ることは、リアルでは少人数の限られた人しか体験できませんが、オンラインならたくさんの人と共有できます。リアル観光の代替の手段としてオンラインを利用するのではなく、その価値を上手く使い、逆にデジタルだからこそできる手法とやり方を通じて、その体験価値を高めていく。リアルのデメリットとなり得る場所や人数など限られてしまうことを補完し、オンライン×リアルの掛け算で体験価値を高めることが大切ですよね。

小村
そうですね。また、先ほどの川杉の話にもありましたが、地域ブランディングでは景色・食・自然・歴史などすでにある価値を組み合わせて伝えていくというプロモーションに留まらず、本質的な価値を見直して新たに継続して創造していくことが重要になります。「発見、育成、浸透、体験、評価」という、このPDCAサイクルをつくっていけるか、地域が一体となって頑張っていこうと思えるかどうかが核となる部分で、「地域の価値創造」全体をプロデュースすることが、観光・地域ブランディングに繋がっていきます。

地域ブランディング推進フロー イメージ
地域ブランディング推進フロー イメージ

実際に見て、聞いて、食べて、触れて感じる。これらはオンラインには無いリアルならではの価値です。特に偶発的な出会いは訪れてみないとわかりません。他の旅行者と出会い、現地の人たちと交流し、色々な発見や感動に出会うことが旅の醍醐味で、実体験のリアルなインパクトはやはりオンラインとは全然違います。そういったリアル体験を導くために、オンラインを並行して有効活用できればと思います。

5 地域課題の本質に寄りそい、最適な「ソリューション」を考える

川杉
JCDが提案する地域ブランディングでは、クリエイティブ開発やプロモーション、イベントなどの個別の施策にとどまらない、それ以前のことをやるべきと考えています。第三者として地域の中に入っていき、地域の本質的な価値や課題をきちんと理解し、そのために何をすればいいのか一緒に考え、どうやったら収益を生み出せるのかという活動が必要であると思っています。

私たちが目指しているのは、僭越ながらプロデューサーとして、地元の人たちと対峙しながら課題を見つけ、価値を醸成していく活動です。観光業に留まらず、今回の食や漁業、人流、ひいては移住人口増などまで考えることも必要で、時にはクラウドファンディングなどの手段も活用し、企業とのコラボレーションや自主収益にも繋げていき、JCDならではのネットワークも生かして、具体的なソリューションをつくっていくべきなんですね。

自治体だけでなく地域のプレイヤーや現場ともっと連携し、JCDとして深く踏み込んでいくことで、産業と食・観光を繋ぐ新しいプロジェクトに取り組んだり、商工会や地元の方々の協力をいただいたりと、共創していくことができると思っています。予算ありきではなく、課題を解決することやソリューションを実現するためにどんなアクションが出来るのか?というところも知恵を絞っています。

小村
地域と一体となって突き詰めて考え、前に進めていくことは基本ですよね。それぞれの地域によってスケールやテーマは違っても、やるべきことのアプローチは同じだと思います。

川杉
穴水町でのプロジェクト1年目では、とにかく現地に通い、地域の方々たちへのヒアリングに時間を費やしました。牡蠣を養殖している方や農家の方、加工場で働いている方、お店の方など、様々な方のお話を聞き、そこで何が大切にされているのかを知りたかったし、関係性も築きたかったんです。そういった過程を経て、今に至ります。

現地の方々とのワークショップの模様(2019年時)
現地の方々とのワークショップの模様(2019年時)


ちなみに、先の「オンライン牡蠣祭り」の開催以降、穴水町でもクラウドファンディングの活用事例をよく耳にするようになり、発信活動を積極的にされているようです。相乗効果の1つですね。

JCDが行う地域ブランディングや地域活性事業では、地域課題に丁寧に寄りそい、その解決策となる最適な「ソリューション」を、自治体・企業などの垣根を越えて提案していくべきと考えています。その有効な解決策になりうるような独自の実証実験も積極的にやっていきたいですね。
そして、コロナ禍前に戻すという回復だけのレジリエンスではなく、危機的な状況によって顕在化された課題の本質と向き合い、手法を観光だけに限定せずに地域の新しい価値を創り出していくしなやかで強靭な「レジリエンス」を目指していきたいと強く思っています。

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