物流・ロジスティクスの改革に向けた取り組み

物流・ロジスティクスは、発着荷主、輸送・運搬、保管等を担う物流事業者、それを支援する周辺のソフトメーカーやハードメーカーなど、プレーヤーが多い複雑な領域です。事業者それぞれの立場があり、課題も多岐に及びます。今、我々が主に取り組んでいるのは、ドライバーの不足、高齢化、労働環境問題へのアプローチから期待されるビジネスの効率化です。物流コストの適正化がなされずドライバーの賃金低下や貧困化が進むと、労働力不足がますます深刻になります。2024年には、ドライバーの残業時間の上限を年960時間とする労働規制が施行される予定ですが、長距離ドライバーなどは、大幅な収入減になってしまう可能性があり、ドライバー不足がさらに加速してしまうことが懸念されます。当協会としても、CO₂削減はもちろん、SDGsの視点からこうした労働問題を深刻な課題として捉え、将来を見据えた活動ができないかと幅広いプレーヤーを集めて議論を進めているところです。宿泊を伴う輸送は中継地点を設けて日帰りに切り替える、輸配送の平準化を図る、ムダに運んでいる部分をまとめるなど、効率化による「担い手にやさしい物流」を目指す事業者もだいぶ増えてきました。しかし、まだまだ現状は厳しく、今後どのように解決していくかが大きな課題となっています。

ドライバー不足をはじめとする物流危機の解決にはいろいろな施策が考えられますが、その一手として、DXなどテクノロジーの活用による効率化、イノベーションにも注目が集まっています。大規模展示会は、各企業を一堂に集め、そうした最新の情報を発信・享受する場、機器や技術の効率・効果を実際に体感してもらう場として大きな役割を果たしています。展示会が、課題解決の1つのきっかけとなることに期待しています。

展示会の持続可能性を見据え、CO2ゼロMICEを導入

展示会は、当協会を含めた7つの団体が主催をしています。産業界のニーズに沿った展示会の内容を考え意見交換する中で、労働問題など持続可能性が脅かされる課題を抱える物流をテーマにする上で、展示会そのものの持続可能性についても考慮すべきだろう、という声が多く聞かれました。展示会は、ブースの装飾や大型の建付け、パンフレットや紙袋など資源の消費が多く、廃材のリユースやリサイクル、コンテンツのデジタル化やペーパーレスへの変換など、これから取り組むべき施策は山ほどあります。消費電力も大きな課題の1つです。物流の展示会は、自動倉庫やマテハン機器など大型機械の出展が多いため、大量の電力を消費します。そうした電力の環境負荷を何とか低減する施策はないか、と探していた時に偶然出合ったのが「CO₂ゼロMICE」のカーボンオフセット事業でした。たまたま他の展示会のHPで見つけ、これならすぐに取り組めて、今後、展示会のアピールポイントにもなり、将来的に効果が見込めると期待し、導入に至りました。今回はトライアルとして、展示会事務局のみの消費電力について「CO₂ゼロMICE」を採用したのですが、今後、出展者に広く波及できれば、展示会そのもののPR効果も期待され、大きな一歩前進になったと実感しています。導入の際は難しいと感じていた電力のCO₂換算も、JCDの担当者のレクチャーがあり計算方法を教えてもらえたため、スムーズに導入に至りました。展示会としてサステナビリティに取り組んでいる、という評価の向上、また将来的に出展者が導入することで、出展者の企業PRやブランディングにも活用できるので、次回以降の展示会にも導入し、広く波及していきたいと考えています。

CO2ゼロMICEの導入と今後の展望

「グリーン電力証書」

「CO₂ゼロMICE」の導入で、「CO₂排出の低減」という、産業界、来場者、出展者、そして実行委員会のニーズを具現化できたこと、まずはトライアルとして、最初の一歩を踏み出せたことは大きな成果でした。次回以降、出展者に採用・協力してもらうよいきっかけになると確信しています。ただ、この活動をどのように波及するかは、これからの検討課題です。

「グリーン電力証書」

今回、会期中のHPやメールマガジン、パンフレットに、来場者向けのPRを発信したところ、「どんな取り組みなのか」「何をしているのか」という質問が多々ありました。グリーン電力の消費量を、木に換算すると何本分か、東京ドーム何個分かなど、貢献度が一般的にイメージしやすい言葉でわかりやすく告知・説明できれば、この活動に取り組む意義がもっと伝わるのではないか、ということにも取り組みながら、次回へつなげていきたいと考えています。また、発行していただいた「グリーン証明書」ももっと有効活用し、効果的に周知していきたいです。
物流は輸送や運搬などCO₂排出量が多い分野です。ゆえに環境負荷軽減に対する企業の意識も高く、様々な取り組みを模索しています。展示会そのものの持続性や社会貢献という観点からも、「CO₂ゼロMICE」を出展者の誘致や来場のきっかけの1つとして推進していきたいです。

左より、JILS総合研究所 風間 正行様と松井 拓様
(日本ロジスティクスシステム協会)

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