2025/09/30
4つの学会を、ひとつに束ねる合同開催の舞台裏
─“縁の下の力持ち”では終わらせない、担当者の調整力とノウハウ─

学会名 | フォーサム2025横浜 |
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会 期 | 2025年7月11日(金)~ 13日(日) |
会 場 | パシフィコ横浜 会議センター |
参加人数 | 1,800名 |
4つの学会を束ねる「フォーサム2025横浜」
2025年7月11日から13日にかけて、パシフィコ横浜 会議センターで「フォーサム2025横浜」が開催されました。参加されたのは、日本眼感染症学会、日本眼炎症学会、日本コンタクトレンズ学会、日本涙道・涙液学会の4学会の医療関係者です。いずれも眼科分野で重要な役割を担っていますが、対象とする領域や参加者層は異なります。そのため、合同開催には高度な調整力と柔軟な対応が求められました。
今回は、運営を担当したJCDの向坂と前川による取り組みをご紹介します。

多学会合同開催に求められる調整力
異なる文化や慣習を持つ4学会が一堂に会することは、単なる会場手配や進行管理を超えた調整を必要としました。

向坂 まず難しかったのは、4学会それぞれの特徴や会長の思いを見極めることです。規模や性格の異なる学会を公平に扱うため、各学会の予算や合同部分の配分を考慮しながら全体構成を組み立てました。また、合同催事の席順や資料掲載の順序など、細部にわたる配慮も不可欠です。これは単なる事務作業ではなく、各学会の特徴や主催者の思いを踏まえた“場づくり”であると感じました。
前川 演題募集から抄録集制作に至るまで、各学会の規定や希望表記を確認し、整理・統一しました。依頼状についても、単独企画は単独会長名で、合同企画は連名で作成するなど、細やかに対応しました。
プログラム構成と会場運営の工夫
異なる文化や慣習を持つ4学会を一堂に会することは、単なる会場手配や進行管理を超えた調整を必要としました。

前川 演者や座長の中には複数学会に関わる方もいるため、役割や時間の重複確認、理事会や評議員会の時間調整は特に大きな課題となりました。そのため、スケジュールの重なりを避ける工夫が欠かせません。さらに、プログラム編集や抄録集の制作においては、表記の違いを整理し、単独企画と合同企画を明確に区別して掲載する必要がありました。これらの調整は複雑でしたが、参加者に分かりやすく情報を伝えるために不可欠な取り組みでした。
向坂 並列で進行するプログラムが重ならないよう、特別プログラムや公式行事の配置を工夫しました。開催日程が段階的に始まるため、すでに進行中の学会とこれから設営する学会のフロアを分け、効率と安全を両立しました。また、展示やポスター会場の配置も学会ごとに工夫し、参加者が迷わないよう動線を整備しました。

“わかりやすさ”と“思い”を形に
前川 プログラムや抄録集の日程表を学会ごとにカラー分けし、参加者が一目で確認できるようにしました。会場看板も同様に色分けし、展示やポスター会場の配置も視覚的にわかりやすく工夫しました。

向坂 休憩コーナーでは各学会長の出身地の銘菓や特産品を用意しました。参加者がリフレッシュしながら地域文化に触れられるよう工夫したことが、満足度向上や学会の魅力発信にもつながったと思います。

チーム連携と蓄積された運営ノウハウ

向坂 合同開催では、全体を見渡す役割が欠かせません。各学会には独自の規定や文化がありますが、主催者や事務局がすべてを把握するのは困難です。そこで、過去の資料や経験をもとに調整し、最終的に全体をまとめ上げました。
前川 演題や座長の重複確認、プログラムの時間調整、制作物の確認など、細かい作業は膨大でした。しかし複数学会が一堂に会することで人のつながりが広がり、新たな交流が生まれました。運営者としての苦労は大きかったですが、その分達成感も大きく、次回以降に活かせる知見を得られました。
合同開催が示す意義
フォーサムは、過去にも複数回開催されてきた合同学会のひとつです。眼科領域における専門分野をつなぐ連携をさらに強化する場であり、各学会の特色を尊重しながら全体をひとつにまとめる運営が求められました。公平性を守りつつ、参加者にとってわかりやすく充実した学びの場を提供するため、運営者の知恵と調整力が随所に発揮されました。
異なる学会がひとつの会場で出会い、新しい交流や学びが生まれる――これこそが合同開催の大きな魅力です。
JCDはこれからも、学会を支える人と人とのつながりを大切にし、参加者が安心して集い、語り合える温かな舞台をつくり続けていきます。
PROFILE
- 向坂 直彦 コンベンション第二事業局 新入社員としてJCDの前々身であるジェイコムに入社以来、一貫して学術会議を扱うコンベンション部門に所属。主に医学系を中心に幅広い分野の学会に携わり、参加者1万人を超える大規模会議の運営も数多く経験している。
- 前川 悦子 コンベンション第二事業局 JTBグループでの旅行業務を経て、2007年にJCDの前々身であるジェイコムへ入社。医学系学会やコンベンションの運営に従事した後、約5年間にわたりエリアマネジメント部で施設運営を経験。2019年からはコンベンション第二事業局に異動し、医学会運営業務に復帰。以降、運営サポートとして数多くの医学会に携わる。
協力
- 第61回日本眼感染症学会
会長 戸所 大輔 様(群馬大学医学部 眼科学教室) - 第58回日本眼炎症学会
会長 堀 純子 様(日本医科大学多摩永山病院 眼科) - 第67回日本コンタクトレンズ学会総会
会長 柳井 亮二 様(徳島大学大学院医歯薬学研究部 眼科学分野) - 第13回日本涙道・涙液学会総会
会長 松村 望 様(神奈川県立こども医療センター 眼科) - パシフィコ横浜 様